研究実績の概要 |
東電福島第一原発事故由来Pu同位体の環境動態解析、環境除染・廃炉作業に伴い発生する廃棄物の汚染状況の把握及び被ばく線量の評価には、重要同位体の測定が必要である。本研究はトリプル四重極ICP-MS/MSを用いて、これまで測定が困難であったPu同位体(Pu-238, Pu-239, Pu-240, Pu-241)の同時測定を可能とする先端質量分析法の開発を目的として研究を進めていた。 ICP-MS/MSでの重要Pu同位体の測定研究では、CO2反応ガスを用いて、イオン-分子反応よりU-238とPu-238を分別する実験条件最適化の検討を行い、238UO+の生成を安定させ、Pu同位体の同時測定法を確立した。また、脱溶媒試料導入装置の導入によりプラズマへの導入効率の増加と水素化物生成の抑製による10倍の感度向上がみられ、3M cps/ppbの高感度測定に成功した。これによってオンマスモードでfgレベルの検出限界を達成した。 試料処理法の研究では、2017年度少量海水迅速分析法を確立した。2018年度は、環境試料と廃炉関連コンクリート試料の新規低温溶融法を開発した。本年度研究では、廃炉関連ステンレス鋼試料の高効分解法を検討し化学分離の迅速化を確認、これを開発したICP-MS/MS測定法と組み合わせ、Pu回収率が高い(>70%)分析法を確立した。さらに、土・堆積物標準試料を用いて、ICP-MS/MSの実試料Pu同位体測定の精度と正確度を確認した。また、本分析技術の応用として、福島にて採取した土コア試料及び日本沿岸地域採取した堆積物を分析し、Puの環境動態解析を行った。本研究で開発した環境と廃炉関連試料中Puの迅速質量分析法は環境に優しい方法であり、環境科学研究と原子力緊急時の対応まで幅広い応用を期待できる。本年度の一連成果をまとめ、近いうちに学会及び学術専門誌での発表を予定しています。
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