研究課題
本研究では、ケイ質殻プランクトンのケイ素循環における役割を定量評価し、ケイ素安定同位体比が意味するケイ素の挙動を解明することで、南北両極域の環境変化が将来的に海洋生態系とケイ素循環にもたらす影響予測に資することを目的とする。そのために、海洋沈降粒子試料中の放散虫群集の1)群集組成、2)シリカ輸送量、3)ケイ素安定同位体比の3点を明らかにすることに重点を置き、研究を進めてきた。1)と2)については、北極域の試料に関して平成30年度末までに当初の目的を概ね達成できた。3)については、二次イオン質量分析計 (SHRIMP-IIe/AMC)を用いたケイ素安定同位体比分析手法の開発のため、試料調製及び一次イオン源等の分析条件に関する試験を重ね、平成30年度末までに分析手法に関する方針が概ね定まった。令和元年度は、3)について、放散虫骨格のケイ素安定同位体比の分析手法を確立するとともに試料の測定を進める予定であった。しかし、平成30年度より続くSHRIMPの故障により、分析のための試験を再開することができず、当初の計画通りには進まなかった。北太平洋亜寒帯域で採取した海洋沈降粒子試料を用いて、ケイ酸塩の骨格を持つ浮遊性原生動物であるフェオダリア群集に由来する有機炭素とシリカの輸送量を明らかにした。フェオダリアは脆弱なケイ酸塩骨格とゼラチン質の細胞体を持つため、取り扱いが難しく、定量的な研究がほとんどなかった。しかし、解剖によりケイ酸塩骨格と軟体部を分けることで、フェオダリア由来の有機炭素量の直接測定を初めて実現するとともに、シリカ量を間接的に推定することができた。有機炭素輸送量について結果をまとめ、国際学術誌に掲載された。また、KH-20-1次白鳳丸南大洋航海(1月20日~2月16日)に参加し、KH-19-1次白鳳丸南大洋航海で設置したセジメント・トラップの回収を行った。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (4件)
Global Biogeochemical Cycles
巻: 33(8) ページ: 1146~1160
10.1029/2019GB006258
https://researchmap.jp/ikesun/
https://www.kaiseiken.or.jp/umimame/lib/umimame_80.pdf
https://www.kaiseiken.or.jp/umimame/lib/umimame_81.pdf
https://www.kaiseiken.or.jp/umimame/lib/umimame_82.pdf