研究課題/領域番号 |
17K00542
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
永井 信 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (70452167)
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研究分担者 |
奈佐原 顕郎 (西田顕郎) 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40312813)
本多 嘉明 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 准教授 (60251774)
小野田 雄介 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70578864)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物季節(フェノロジー) / リモートセンシング / ドローン / タイムラプスカメラ / 里地里山 / スダジイ / 樹種分類 / クヌギ |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、千葉大学関連施設「みほの森」(里山、東金市)・海洋研究開発機構「横浜研究所」(横浜市)・玉川大学キャンパス(里山、町田市)・京都大学周辺「吉田山」(社寺林、京都市)において、スダジイ(コジイ)・コナラ・クヌギ等の植物季節画像を撮影した。より多地点において植物季節画像が得られるように、筑波大学植物見本園や国立科学博物館附属自然教育園(自然林、港区)等にタイムラプスカメラを増設した。横浜研究所では、コナラやクヌギ等の目視観察を開葉/開花期にほぼ毎日行った。 上述で得られた植物季節画像は、観測年数が少ないため、国立科学博物館附属自然教育園において長期的に観測されたスダジイの満開日のデータを利用して(同園ウェブサイト上で毎週更新公開されている開花季節情報は、2009年から2018年)、満開日と日平均気温の対応関係を調査した。その結果、2018年のスダジイの開花は例年と比べて2週間程度早かったが、その原因として春先の高温状態が示唆された。 千葉大学環境リモートセンシング研究センター平成30年度共同利用研究「里地里山におけるリモートセンシングによる植物季節観測の高精度化II」(研究代表者:永井信)と関連し、「みほの森」では1-2ヶ月ごと、玉川大学キャンパスでは6月と11月に、ドローンによる空中写真の撮影を行った。 上述の地上観測地点周辺を対象に、SENTINEL-2衛星(空間分解能:10m、観測頻度:5日ごと)により観測された分光反射率データを収集し、RGB画像の季節変化を調査した。その結果、スダジイ(コジイ)が分布するピクセルでは、開花前の緑色から開花期の明るい緑色、そして開花後の緑色への変化が検出された。これらの変化は、開花期に樹冠一面が緑色からクリーム色に変化するスダジイの植物季節の特徴をよくとらえていると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の本研究の当初計画は、みほの森・横浜研究所・玉川大学キャンパス・吉田山における植物季節画像の継続的取得と、スダジイ・コナラ・クヌギの開花日やモウソウチクの開葉日の予測モデルの開発である。 本年度は、コナラ・クヌギの開花日やモウソウチクの開葉日の予測モデルの構築には至らなかった一方、(1)筑波大学植物見本園や国立科学博物館附属自然教育園、高知大学へタイムラプスカメラを増設できたこと、(2)自然教育園において長期的に観測されたスダジイの開花季節情報と日平均気温の対応関係の調査ができたこと、(3)他の研究プロジェクトと関連し、3年目で計画するドローンによる空中写真の撮影が2地点でできたこと、(4)4年目で計画する高空間分解能を持つ衛星観測データと地上観測値の対応関係を調査できたことを理由として、概ね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次の6項目を重点的に行う。すなわち、(1)継続的に、みほの森・横浜研究所・玉川大学キャンパス・吉田山・筑波大学植物見本園・国立科学博物館附属自然教育園・高知大学において、スダジイ(コジイ)・コナラ・クヌギ等の植物季節画像を取得する。(2)横浜研究所において、コナラやクヌギ等の目視観察を開葉/開花期にほぼ毎日行う。(3)コナラ・クヌギの開花日やモウソウチクの開葉日の予測モデルを開発する。(4)スダジイ(コジイ)の開花日の予測モデルを高精度化する。(5)当初の計画と比べて1年前倒しで、高空間分解能を持つ衛星観測データの解析によりスダジイ(コジイ)の樹種判別の手法を開発する。(6)他の研究プロジェクトと関連し、みほの森等においてドローンによる空中写真の撮影を行う。 ドローン観測に関しては、開花日や開葉日の予測にあわせた関係者の日程調整や天候予測が困難であるため、できる限り、植物季節の変化の特徴を検出しやすい日時を対象とする。リモートセンシング観測による常緑樹であるスダジイ(コジイ)の樹種判別は、落葉性の樹種(コナラ・クヌギ)と比べて、当該分野研究における科学的インパクトがより大きい。このため、今後は、スダジイ(コジイ)により力点をおいた研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者による他の予算の利用や時間不足等を理由とした各観測サイトへの視察/調査を行わなかったため旅費に次年度使用が生じた。これらは、次年度において、観測のための物品費(双眼鏡やタイムラプスカメラ、記録媒体)や各観測サイトへの旅費に利用する。
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