研究課題/領域番号 |
17K00548
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茂木 章 京都大学, 医学研究科, 助教 (80452332)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DNA損傷トレランス / 複製後修復 / 相同組換え / ユビキチン |
研究実績の概要 |
■ A-1. SHPRH/BRCA1二重変異DT40株の解析: SHPRH/BRCA1二重変異株の主要DNA修復経路の機能状況を知るために、各経路の機能を反映する代表的DNA損傷剤に対する感受性のプロファイリングを行った。その結果、SHPRH/BRCA1二重変異株はオラパリブ (PARP阻害剤)とカンプトテシン(topoisomerase I阻害剤)に高感受性を示し、γ線(DSB修復を反映)、エトポシド (topoisomerase II阻害剤)、シスプラチン(DNA架橋損傷剤)に対する感受性はBRCA1単独変異株と変わらなかった。これらのことから、SHPRH/BRCA1二重変異株は、鎖切断に起因する相同組換え修復HDR経路と相補的に働く修復経路に機能不全があることが示唆された。SHPRH/BRCA1二重変異株のOVA遺伝子座にSC-neoを遺伝子導入した際の標的組換え効率は、77.1% (27/35)で、BRCA1単独変異株の13.5% (5/37)に比較して大幅な回復が見られた。このことからSHPRHは標的組換えにおいてBRCA1と拮抗的に働くことが示唆された。また、SHPRH/BRCA1二重変異株にトリSHPRH及びBRCA1 の野生型や各種変異cDNAをisogenicに再導入するために、OVA遺伝子座にFlip-In部位をもつ細胞株を作成した。 ■ A-2. ZRANB3単独変異DT40株及びZRANB3/BRCA1二重変異株の作成: これらのDT40株を作成した。 ■ B. ヒト培養細胞でのSHPRH, HLTF, ZRANB3の単独変異株の作成: ヒトSHPRH, HLTF, ZRANB3の遺伝子破壊CRISPR/Cas9ベクターを作成した。ヒトBRCA1のユビキチンリガーゼ不活化点変異cDNA及びSHPRHのユビキチンリガーゼ、ヘリカーゼ不活化変異点変異 cDNAを作成し、Flp-In用ベクターに導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
■ A-1. 予定通りSHPRH/BRCA1二重変異株の主要なDNA損傷剤に対する感受性を測定し、オラパリブとカンプトテシンに対してBRCA1単独変異株よりも強い感受性を示すという期待される結果を得られた。このことからハイドロキシウレアとアフィジコリンに対する感受性の測定は優先順位を下げ後日必要に応じで行うこととした。また、SHPRH/BRCA1二重変異細胞において、PARP阻害剤処理後のRPA, RAD51とγH2AXの集積動態を検討するために阻害剤濃度やタイムコースの検討を行った。 ■ A-2. ZRANB3がSHPRHと同様にBRCA1との二重変異によってPARP阻害剤に強い感受性を示すかを検討するために、ZRANB3/BRCA1二重変異DT40株を作成した。 ■ B. SHPRH, HLTF, ZRANB3の遺伝子破壊CRISPR/Cas9ベクターを作成した。こっらを用いてヒトU2OS細胞株由来のSHPRH, HLTF, ZRANB3単独遺伝子破壊細胞株を作成中である。表現形の評価をするために、遺伝子再導入による相補実験によりヒトBRCA1及びSHPRHの活性部位の必要性を検討するために、ヒトBRCA1のユビキチンリガーゼ不活化点変異cDNA及びSHPRHのユビキチンリガーゼ、ヘリカーゼ不活化変異点変異 cDNAを作成し、Flp-In用ベクターに導入した。
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今後の研究の推進方策 |
■ A-1. SHPRH/BRCA1二重変異DT40株の解析: SHPRH/BRCA1二重変異細胞のPARP阻害剤添加後の染色体断裂率、相同組換え効率の測定などを行う。SHPRH, BRCA1単独変異細胞及びSHPRH/BRCA1二重変異細胞において、RAD51(HDRを反映)とγH2AX(DSBsを反映)の集積動態を条件検討によって得られた条件をもとに、今後さらに比較定量する。DNA新生鎖を蛍光標識抗体で検出するDNA fiber assayは、より定量的な測定を行う機器を導入した共同研究者に試料を提供し解析の分担を依頼することを検討している。 ■ A-2. ZRANB3単独変異DT40株及びZRANB3/BRCA1二重変異株の作成: これまでに作成したZRANB3/BRCA1二重変異株のオラパリブ、カンプトテシン及びγ線に対する感受性を検討する。 ■ B. ヒト培養細胞でのSHPRH, HLTF, ZRANB3の単独変異株、及びこれらの遺伝子とBRCA1との二重変異株の作成: CRISPR/Cas9を用いてヒトHLTF/BRCA1及びZRANB3/BRCA1二重変異株を作成する。これらの細胞株が出来次第、各細胞株を用いてDT40細胞の解析に準じた表現型解析を行う。さらに各ヒト細胞をマウスに異種移植し、PARP阻害剤投与の効果を検討するジェノグラフト実験を行うために必要な手続き、検査等を行う。
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