研究課題/領域番号 |
17K00548
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茂木 章 京都大学, 医学研究科, 助教 (80452332)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNA損傷トレランス / 複製後修復 / 相同組換え / ユビキチン |
研究実績の概要 |
■ A-1. BRCA1遺伝子のエクソン11を薬剤マーカーで置換したBRCA1-/-株と薬剤マーカーを除いたBRCA1Δ11/Δ11株を作成した。BRCA1Δ11/Δ11株はエクソン11によってコードされる1,118アミノ酸を欠くBRCA1Δ11を発現する。これらの株は同程度のγ線感受性を示すのに、BRCA1 -/-株はBRCA1Δ11/Δ11株に比べてより強いPARP阻害剤感受性を示した。これらのことからDNA二本鎖切断修復にはBRCA1のエクソン11が必須だが、相同組換え修復(HR)においてはエクソン11とエクソン11以外の部分(BRCA1Δ11)双方の貢献が必要であることが示唆された。 SHPRH-/-BRCA1-/-株、SHPRH-/-BRCA1Δ11/Δ11二重変異株を作成した。BRCA1Δ11/Δ11株のOVA遺伝子座へのSC-neo遺伝子ノックイン効率は41.4% (12/29)に比べてSHPRH-/- BRCA1Δ11/Δ11二重変異株の効率は78.1% (25/32)と回復した。一方、SHPRH-/- BRCA1-/-株の効率は6.7% (2/30)と大幅に低下した。SC-neoアッセイによる相同組換え(HR)効率は、SC-neoノックイン効率にほぼ比例した。これらのことから、BRCA1変異(-/-もしくはΔ11/Δ11)による表現型はSHPRH変異によって異なる影響を受けることがわかった。 ■ A-2. ZRANB3単独変異株の感受性プロファイリングを行なった結果、γ線、カンプトテシン、エトポシド、シスプラチンの何れも野生株と変わらなかった。 ■ B. ヒトBRCA1変異乳がん細胞株UWB1.289とBRCA1遺伝子を相補した細胞株にSHPRHのshRNAを発現させた細胞株を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
■ A-1. SHPRH-/- BRCA1Δ11/Δ11二重変異株の代表的DNA損傷剤に対する感受性のプロファイリングを行った。また、SHPRH-/- BRCA1-/-株及びSHPRH-/- BRCA1Δ11/Δ11二重変異株にSHPRH遺伝子を再導入した細胞株の表現型をBRCA1-/-株及びBRCA1Δ11/Δ11二重変異株と比較検討している。 ■ A-2. ZRANB3-/- BRCA1-/-二重変異株の主要薬剤に対する感受性を調べている。またZRANB3-/- BRCA1-/-株のDSB誘導性HR効率を測定するため、OVA遺伝子座にS C-neoを導入した。 ■ B. SHPRH/BRCA1二重変異株の解析により詳細な検討が必要になっため、ヒトBRCA1変異乳がん細胞株UWB1.289を用いた解析に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
■ A-1. BRCA1-/-株とBRCA1Δ11/Δ11及びこれらとSHPRH-/-との二重変異細胞の表現型の違いの分子メカニズムを解明するためにγ線照射後のRAD51とγH2AXの集積などを測定する。また、PARP阻害剤添加後のDNA新生鎖を蛍光標識抗体で検出するDNA fiber assayを行う。 ■ A-2. ZRANB3-/- BRCA1-/-二重変異株の薬剤感受性及びHR能を検討する。 ■ B. ヒトBRCA1変異乳がん細胞株UWB1.289においてSHPRH遺伝子の発現抑制をした細胞株の表現型解析を行う。また、CRISPR/Cas9を用いてヒトSHPRHおよびBRCA1遺伝子の単独変異株を作成する。これらの細胞株が出来次第、各細胞株を用いてDT40細胞の解析に準じた表現型解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
BRCA1-/-変異とBRCA1Δ11/Δ11変異バックグランドにおいてSHPRH変異の影響が異なることがわかったため、SHPRH-/- BRCA1-/-株とSHPRH-/- BRCA1Δ11/Δ11株の表現型の解析をさらに行うことにした。次年度にこれらの予算を執行し、実験を実施する予定である。
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