研究実績の概要 |
2013年のJ-PARC(大強度加速器施設)における放射性核種の漏洩事故は、放射化した金属ターゲットが、機器の故障により大強度の陽子ビームに照射されて溶融・蒸発したために起きた。放射化金属中には、高エネルギー加速器施設特有の核反応である核破砕反応によって生成した多種類の放射性核種が含まれており、種々の元素、化合物の飛散挙動の違いが観測されている。本研究は同様の漏洩を防止するために、放射化させた金属試料等を用いて高温炉による溶融実験を行い、核種飛散挙動の解明を目指すものである。本研究の知見は、加速器放射線安全の確保等に大きく寄与すると同時に、福島第一原発事故における多種類の放射性核種の放出事象の解明にとっても有益である。 本研究では、加熱による放射化金属からの放射性核種の飛散挙動として、生成するエアロゾル粒子の核種別の粒径分布や粒子への放射性核種の濃縮挙動等を観測する。このために、発生する高温の放射性エアロゾルの捕集や、各種エアロゾル粒子の導入が行える高温炉とエアロゾル捕集システムの開発・整備を行い、放射化した金属の溶融実験を行う。 これまでの期間(H29~R3)では、途中装置等の不調やコロナの影響による出張実験の中断などがあったが、加熱炉として用いる高周波誘導加熱炉の開発と、低圧インパクタを用いる粒径別エアロゾル捕集システムの開発と実験条件の最適化をほぼ終了した。さらにR3年度にはAr雰囲気、約1,800℃の条件で高エネルギー陽子加速器内で放射化されたアルミニウム試料などの溶融を行い、生成したエアロゾル粒子の放射能基準の粒径分布等の解析を行うことができた。Al中には放射化核種であるNa22が生成していたが、加熱により生成したNa22を含むAl粒子の粒径はNa22を含まないAl粒子よりも小さくなった。R4年度はさらにAu試料などを対象とする実験を進め、総合的な解析を試みた。
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