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2017 年度 実施状況報告書

RNF168によるDNA2本鎖切断応答・修復制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K00550
研究機関大阪大学

研究代表者

平出 祥啓  大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (80795526)

研究分担者 中田 慎一郎  大阪大学, 医学系研究科, 特命教授 (70548528)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードDNA2本鎖切断 / ユビキチン鎖 / ユビキチン鎖結合ドメイン / ユビキチン転移酵素 / 放射線生物学
研究実績の概要

生物の遺伝情報を担うDNA2本鎖は放射線により切断される。切断されたDNA2本鎖はゲノム不安定性や細胞死の要因となり得る。これらを回避するため、生物は、DNAの切断部位を自ら探し当て、そこを修復するための巧妙な機構を進化の過程で獲得している。
RNF168はヒト細胞においてDNA2本鎖切断部位に集積し、その後のDNA2本鎖切断応答やDNA修復機構の活性化に必須のユビキチン転移酵素である。これまでに、RNF168のDNA2本鎖切断部位への集積は、RNF168に内在する2つのユビキチン鎖結合ドメイン(UDM1、UDM2)が担っていることが知られていたが、これらのドメインとユビキチン鎖との結合様式の詳細が原子レベルで解明されていなかったため、UDM1、UDM2の機能解析には限界があった。本研究の目的は、最新の結晶構造解析の結果に基づき、UDM1、UDM2に着目したRNF168の分子機能を、DNA2本鎖切断部位への集積機構やDNA2本鎖切断応答・DNA修復制御機構の観点から解明することである。
初年度は、UDM1、UDM2を構成するアミノ酸残基の一部をアラニン変異させたRNF168変異体(外来性RNF168)をTet-Onシステム制御下で発現するヒト細胞株を樹立した。内在性RNF168をノックダウンした上で、外来性RNF168の発現誘導を生理的レベルで行い(外来性RNF168にはノックダウンの標的とならないようなサイレント変異を導入した)、ガンマ線照射後の細胞核内におけるRNF168の集積動態を蛍光免疫染色法により解析した。その結果、K63結合型ユビキチン鎖の近位ユビキチンの主鎖と水素結合するUDM2のAsp446残基がRNF168のDNA2本鎖切断部位への集積に必須であることが分かった。又、RNF168の集積とDNA損傷応答分子の集積が必ずしも相関しないという知見を得つつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

RNF168変異体を生理的レベルで発現するヒト細胞株をTet-Onシステムを用いて樹立し、この細胞株を用いてガンマ線照射後のRNF168やDNA2本鎖切断応答分子Xの集積動態に関する新知見を得つつある。ただ、樹立した細胞株において、外来性RNF168を発現する細胞の割合は、当初の予想に反して、全細胞の2割程度であった。この問題を克服するため、セルソーティングを繰り返したり、遺伝子のコンストラクトを変更したりしてみたが、やはり 外来性RNF168を発現する細胞の割合は2割程度にとどまった。現在、対応策を検討している。また、当初、UDM1、UDM2の変異体だけでなく、ユビキチン活性を無くしたRNF168変異体の解析も予定していたが、この変異体については、UDM1、UDM2の変異体と比べ、細胞内での発現レベルが極端に低くなってしまい、蛍光免疫染色法による集積動態の解析が難しい状況にある。以上のことを勘案し、やや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

・DNA2本鎖切断応答の解析に関しては、既に樹立したRNF168変異体を発現する細胞株を用い、ガンマ線照射後のDNA2本鎖切断応答分子やDNA修復関連分子の局在解析を蛍光免疫染色法により進めていく。
・DNA2本鎖切断修復制御機構の解析に関しては、DNA2本鎖切断誘導後の相同組換え頻度を可視化できる細胞を用い、RNF168変異体の発現により相同組換え頻度が変化するかをフローサイトメーターを用いて解析する。
・RNF168のユビキチン鎖結合ドメインと結合する基質の同定に関しては、タグを付加したRNF168変異体を細胞内で発現させ、タグに対するアフィニティー担体を用いて回収される画分を質量分析に供することで結合基質の同定を試みる。
・研究分担者の中田は、本研究推進のための研究補佐員を、週1回程度、雇用する。

次年度使用額が生じた理由

予定していた全てのDNA2本鎖切断応答分子・DNA修復関連分子の蛍光免疫染色を初年度に行なわなかったことや、当初の見積もりよりも安く細胞株が樹立できたこと、学会発表を見送ったこと、キャンペーン対象商品の購入を心掛けたこと等の理由により、次年度使用額が生じた。これらは翌年度請求分と合わせ、蛍光免疫染色に必要な抗体、アフィニティー精製用の担体、蛍光標識キット、トランスフェクション試薬、細胞培養や生化学実験のための物品購入費や、シークエンス解析・質量分析にかかる受託研究費、研究補佐員を雇用するための人件費に充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Structural insights into two distinct binding modules for Lys63-linked polyubiquitin chains in RNF1682018

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Tomio S.、Hirade Yoshihiro、Toma Aya、Sato Yusuke、Yamagata Atsushi、Goto-Ito Sakurako、Tomita Akiko、Nakada Shinichiro、Fukai Shuya
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 170

    • DOI

      10.1038/s41467-017-02345-y

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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