研究課題
平成29年度の当初の研究計画に基づく研究実績の概要を、以下、項目ごとに挙げる。【項目1:ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】蛍光タンパク質GFPを二分割したsplit-GFPシステムを用い、ヒトTLSポリメラーゼとユビキチン(Ub)を融合タンパク質として発現する細胞の樹立を試みた。現在までに複数種類の安定発現細胞を作成したが、Ub-split-GFPの発現が低い問題でスクリーニングに必要な蛍光シグナルの検出に至っていない。現在、発現プロモーターの変更とコピー数調整による改善を試みている。【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の探索と解析】140種類のクロマチン構造変換因子を標的とするsiRNAライブラリーを用い、ヒトPoletaのシスプラチン損傷依存的なクロマチン結合に関わる因子を複数同定した。【多光子励起生細胞イメージングによる染色体複製反応とTLS反応の解析】イメージングに用いる細胞として、GFP融合タンパク質としてヒトTLSポリメラーゼを安定発現するU2OS細胞を作成した。さらに、細胞周期S期マーカーであるPCNAの核内局在をリアルタイムで検出するため、PCNA特異的なクロモボディと融合したRFPを同時に安定発現させた。オリンパスFV3000共焦点走査型レーザー顕微鏡をベースにした780 nmレーザー三光子照射原理で任意の座標に紫外線損傷を生じさせることのできるシステムを利用し、作成した細胞でのヒトTLSポリメラーゼの挙動を観察している。現在、細胞周期のS期とそれ以外の時期における紫外線損傷部位へのヒトPoletaの応答を中心にデータ収集を行なっている。【TLS反応を特異的に阻害する化合物の探索】先行研究でヒトPoletaへの阻害活性が認められた化合物を用い、他のTLSポリメラーゼ、および複製型DNAポリメラーゼを用いた特異性の検証を行っている。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究計画で掲げた4項目について、1項目はやや進展が遅れているものの、他の項目については当初の予定通り、あるいはそれ以上に進展している。また遅れのある項目については、当初の計画にはなかった実験をバックアップとして同時進行させており、次年度以降の発展が期待されることから、全体として「おおむね順調に進展している」と評価した。
【現在までの進捗状況】で評価した通り、当初の予定をおおむね順調にクリアしていることから、次年度以降も計画に従って研究を発展させていく方針である。
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DNA Repair
巻: 61 ページ: 76~85
10.1016/j.dnarep.2017.11.006