研究課題
近年、放射線発がんリスクの標的として組織幹細胞が挙げられており、組織幹細胞の動態に着目した放射線発がん分子機構解明が重要となっているが、現状ではほとんど解明されていない。我々は、ヒト大腸がんモデルマウス(ApcMin/+マウス)とコンソミック系統マウスを用いたマウスモデルを用いることにより低線量・低線量率放射線被ばくを有意に検出できることを見出した。更にこのモデルでは、放射線発がんの爪痕を高感度に検出することができるという利点を持つ。そこで本研究では、このマウスモデルを応用し、Apc遺伝子を欠損させた小腸幹細胞の細胞競合を始めとした放射線応答と照射時年齢が発がんに及ぼす影響について解析し、最終的には、低線量・低線量率発がんリスク評価の基礎基盤に貢献することを目指す。本年度は、マウス小腸幹細胞で特異的にApc遺伝子欠損を検出することができるマウスの作成に着手した。3種類の遺伝子改変マウスを入手し、それぞれのマウスをかけ合わせを開始した。得られたマウスは、生後2~4週齢でgenotypingを行うことにより、目的の遺伝子が挿入されたマウスを選別した。また、腸管オルガノイドを用いた、放射線感受性と損傷応答解析を行うため、マウス小腸を採取し、腸管オルガノイド培養を行った。
3: やや遅れている
今年度、使用している動物施設にてマウス肝炎ウイルスによる感染があったため、実施していた実験の中止を余儀なくされたため。
今年度開始した、小腸幹細胞特異的にApc遺伝子欠損を検出することができるマウスの作成を継続し、実験条件の確立を目指す。また、ヒト大腸がんモデルマウス(ApcMin/+マウス)では、照射時年齢により放射線発がんリスクが異なることが知られている。そこで、このモデルマウスを用いて、照射時年齢が発がんに及ぼす影響について解析するための発がん実験を開始する。
今年度は、使用している動物実験施設にてマウス肝炎ウイルスによる感染が生じたため、開始していた実験を一時中断することを余儀なくされた。それにより、次年度使用額が生じた。そのため、次年度は、今年度予定していた実験もあわせて遂行する予定であり、余剰金はそのために充てる予定である。
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