現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、オートファジーが甲状腺の放射線照射後急性期の感受性または慢性期の発がんにどのように関与するか明らかにすることを目的としている。今年度は昨年に引き続き、オートファジー阻害薬であるヒドロキシクロロキン(HCQ)200mg/kgを6週齢雄性ウィスターラットに照射前3日間経口投与し、非照射、4GyX線照射後3, 6, 24時間後の甲状腺及び肝臓組織を採取した。コントロール群は生食を投与し、同時期に組織を採取した。細胞死の指標であるTUNEL陽性細胞数を定量した結果、肝臓では照射後HCQ投与群が非投与群に比べ有意に高い値を示したが、甲状腺では両群間の差は見られなかった。甲状腺ではHCQ投与による照射後の細胞死の誘導は見られなかった。一方Ki67陽性細胞数は甲状腺、肝臓共放射線照射によりHCQ投与群で有意に低下し、甲状腺で照射後HCQ投与による増殖細胞の低下が見られた。肝臓ではウェスタンブロットによりp62, LC3-II/LC3-Iの照射後の増加が見られたが、甲状腺では見られなかった。甲状腺組織のオートファジー関連遺伝子の変化をキアゲンのRT2 profiler PCR Arrayで調べた結果、照射後24時間後の非投与群とHCQ投与群では、Maplc3a, Park2, Snca, Ctss, Ulk1, Maptなどの9遺伝子が有意に低下していることが明らかになった。慢性期のオートファジー阻害による甲状腺腫瘍発症率を調べるため、6週齢雄性ウィスターラットをHCQ投与群(n=27)と、生食を投与するコントロール群(n=29)に分け、照射前2日から投与を開始し、当日投与2時間後に、HCQ群n=18、コントロール群n=19にX線4Gy前頸部局所照射後を行った。甲状腺腫瘍が発生する18ヵ月まで現在飼育観察中である。
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