研究課題
2019年4月より弘前大学へ異動したことに伴い、本年度は実験環境の整備に重点を置いて進めた。学内にある低バックグラウンド液体シンチレーション計数装置(LB5, 日立)については、調整およびキャリブレーションを進め、測定できる環境を整えた。低拡散バイアル(145mL)を用い、試料水50mLに対しシンチレーターを同量混合した際のバックグラウンドはおおよそ2.5cpmであった。また、試料の前処理に必要な常圧蒸留装置を組み上げると共に、前職場より固体高分子膜電解濃縮装置を移設し、調整を終えた。固体高分子膜電解濃縮装置については、リザーバーの外側を冷却水で冷やすことで濃縮倍率を高める改造を行った。改造した2台の濃縮装置のスペックは、試料水800mLからA設定50A・40時間、B設定20Aで約60mLまで濃縮した際の濃縮率はおおよそ7倍であった。また、改造していない濃縮装置の濃縮倍率は約6.5倍であり、有意に高い濃縮倍率を得ることができた。これまでに基本スペックでの製作を終えた高時間分解大気トリチウム捕集システムは、分解した後に移設し、再度の組み上げを実施した。その際、サンプリングチューブ等の交換も実施した。電磁バルブと操作パネルからなる自動化システムについては、原因不明のエラーが出たものの、無事復旧した。大気中トリチウム濃度はそれぞれの化学形(HTO,HT)で春季に比較的濃度が増加する傾向があることが知られていることから、3月に2週間程度の集中観測を計画していた。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い中止となった。そのため、観測地点である札幌市における空気塊の輸送経路解析と高層気象データ解析手法についての検討を実施した。
3: やや遅れている
2019年4月に現職へ異動したことに伴い、本年度は実験環境の整備に重点を置いて進めた。現職場には、基本的な機材や設備が整備されていなかったため、前職場からの装置移設手続きを進め、設置・立ち上げを行った。実験環境整備については順調に進み、ようやく基本環境を整備することができたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、3月に札幌で実施予定であった集中観測は中止となった。ただし、観測地点である札幌市における空気塊の輸送経路解析と高層気象データ解析手法についての検討を終えることができた。そのため、計画の遅れはわずかであり、本年度内に成果を取りまとめることが可能な範囲である。
緊急事態宣言を受けたことによる社会環境の変化を受け、新規に組み上げた高時間分解能採取装置を用いた札幌での集中観測は不透明な状況にある。今後は、連携研究機関と十分に調整し、可能な範囲で集中観測を進めることを計画している。ただし、困難な場合は2018年に観測したデータを用い、気象データを用いた解析を進める予定である。また、これまでに得られた疎水性参加触媒の基礎データについて整理を行う。さらに、弘前市において大気水蒸気捕集の時間分解能に影響を及ぼす絶対湿度と各種気象データの関係を明らかにし、将来の連続観測に向けた基礎データ取得および解析を実施し、最終報告書取りまとめに向けた準備を進める。
異動に伴い実験に遅れが出たため差額が生じた。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により調査出張が滞ったため。本年度はコロナウイルスの状況を見ながら、北海道科学大学での集中観測を実施する。調査に伴う消耗品購入も順次進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Plasma and Fusion Research
巻: 15 ページ: 1-3
10.1585/pfr.15.2405027.
International Journal of Environmental Research and Public Health
巻: 16 ページ: 3883~3883
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