研究実績の概要 |
加速器実験施設では、標的やビーム窓等に多量に生成される放射性核種を適切に取り扱うことが不可欠であり、J-PARCハドロン実験施設の金標的内に生成される放射性核種のヘリウム気体への移行挙動と、J-PARC MLF実験施設の液体水銀標的内に生成される放射性核種の気相への移行挙動を中心に解析を進めている。 ハドロン実験施設では、標的とビーム窓に生成される多種類の核種のうちで気体状化学種を生成しやすい元素の核種が選択的に気相に移行すること、主に気体として存在すると考えられる C, N, O, Ne, Ar核種では固相から気相への移行割合が同程度の値を示すこと、固体や液体としても存在すると考えられる F, Hg核種は左記核種に比べ気相への移行割合が小さいことなどが明らかになっていた。令和2年5月から新たに稼働を始めた、形状と冷却方式、作動温度等が一部変更された新標的システムにおいても、標的循環ヘリウム気体中の放射性核種の濃度を観測し、固体中の核種生成量計算値と比較することなどにより、旧標的システムでの結果を含めた総合的な考察を進めた。 MLF施設での検討では、水銀標的から発生する放射性ガスの挙動に着目し、放射性ガスの測定データや、水銀標的容器(ステンレス製)交換時の放射性ガスの室内モニタリングデータ等を調べ、放射性希ガス及びH-3の挙動を分析した。特にH-3については、水銀中で生成された相当量が標的容器に吸収されるとともに、特徴的な挙動を持って気相に放出されることを明らかにし、水銀中でのH-3の発生から容器材料への吸収さらに放出までの物理的及び化学的プロセスの解明とともに、外的環境(気温・湿度や容器材料の表面状態等)が放出挙動に及ぼす影響の解析を進めている。 また、放射性核種が加速器施設内に漏えいした時の対応等も含む施設の安全確保について国際会議で発表し、他機関との情報共有を行った。
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