研究課題
乳腺は、放射線発がんリスクの最も高い組織の一つである。一方、その発がんメカニズムに関する知見は未だ乏しい。本研究では、申請者らがこれまでの研究で保存してきたラット乳がん検体について、次世代シークエンス技術を用いた高速かつ網羅的な遺伝子変異解析を行い、自然発症、化学発がん物質、線質の異なる放射線被ばくによって生じた乳がんにおける変異遺伝子を同定し、変異遺伝子の種類や変異頻度、変異パターンを比較解析することで、放射線発がんリスクを説明する分子メカニズムの解明と、変異シグネチャーの探索を行う。得られる結果は、放射線による発がんリスク評価の信頼性向上と、発がんの予防法開発に活用できる。今年度は、散発性ヒト乳がんで見つかっている変異遺伝子96種をターゲットに、ラット乳がん変異候補遺伝子の次世代シークエンス用遺伝子検査パネルを作製した。また、申請者らがこれまでの研究で保存してきたラット乳がん検体からゲノムDNAの抽出を行い、候補遺伝子の全エクソン領域を回収した。次世代シークエンス技術を用いた遺伝子変異解析を開始し、自然発症、放射線被ばくにより発生した乳がん検体から遺伝子配列データの取得及び、遺伝子変異の検出を行った。
2: おおむね順調に進展している
ヒト散発性乳がん変異遺伝子96種をもとに、ラットのホモログ遺伝子の全エクソン領域を回収するためのプローブを設計し、次世代シークエンス用のラット乳がん変異候補遺伝子の検査パネルを作製した。次いで、申請者らが保存しているラット乳がんin vivo検体より抽出したゲノムDNAから全エクソン領域の回収を行い、次世代シークエンスによる遺伝子変異解析を開始できたことから、次年度に行う研究に向け順調に進んでいる。
今後は、自然発症、ガンマ線、炭素線、中性子線被ばく、化学発がん物質(MNU)暴露によって生じた各乳がんにおける変異遺伝子の種類や変異頻度、変異パターンを比較解析し、放射線被ばく乳がんの原因変異遺伝子を明らかにすると共に、変異シグネチャーの探索を行う。
実験を効率的に進める上で、試薬の消費期限を考慮した結果、実験の一部を次年度にまとめて行うことにしたため。
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