研究課題/領域番号 |
17K00568
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
日吉 峰麗 島根大学, 医学部, 助教 (30363162)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | D-ドーパクロムトートメラーゼ / 四塩化炭素 / 肝傷害 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
ラット正常肝と、四塩化炭素を投与することにより誘導したラット傷害肝それぞれに含まれるタンパク質の発現レベルの違いを網羅的に比較する中で、研究代表者らは傷害肝中に新規修飾型D-ドーパクロムトートメラーゼ (DDT) が強く検出されるようになることを明らかにしている。本研究は新規修飾型DDTと、未修飾型DDTの傷害肝に対する作用の違いを明らかにすることで、修飾型DDTによって方向づけられる肝細胞への働きかけを解明することが目的である。 DDT は近年サイトカインとしての活性に注目が集まっており、マクロファージ遊走阻止因子 (MIF) の受容体に作用して様々な情報伝達経路を刺激することが報告されている。またこれまでの報告から、情報伝達の制御においてはDDTと細胞内の特定のタンパク質との相互作用も示唆されている。即ち DDT が担う細胞の内と外での役割に、新規の修飾はどの様な影響を与えることになるのか?この疑問の解明に高純度の新規修飾型DDTと未修飾型DDT の獲得は必須であることから、平成29年度は、ラット傷害肝中からの修飾型と未修飾型DDT を分離・精製する手段の構築を計画し、着手した。四塩化炭素により誘導したラット傷害肝を緩衝液中ですりつぶし、遠心操作により可溶性タンパク質画分を獲得した。その後、複数の原理によるカラムクロマトグラフィーを用いて、DDT 画分の吸着と溶出を繰り返し、分離・精製を進めた。DDT 画分はイムノブロット法により確認した。DDT は1種類のサブユニットが3つ組み合わされた三量体構造をとるが、3つのサブユニットにまったく修飾を含まないものから、3つのサブユニット全てに修飾を含むものにまで分けて、高純度の分離・精製を達成した。平成29年度はさらに、マイクロビーズに結合させた修飾型・未修飾型DDTと相互作用するタンパク質を複数検出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に計画していた新規修飾型 DDT と未修飾型 DDT の分離・精製手段の構築が達成できた。また、当初から予定していたタンパク質とDDTの相互作用解析だけでなく、大規模に評価する系が確立されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロビーズに結合させた修飾型DDTと未修飾型DDTに相互作用するタンパク質を二次元電気泳動により分離し、検出強度に違いのあるタンパク質(それぞれのDDTと相互作用する候補タンパク質)を質量分析法により明らかにする。 肝がん細胞株への修飾型DDTと未修飾型DDTの添加後、リン酸化タンパク質を濃縮可能な樹脂を用いてそれぞれの細胞からリン酸化タンパク質を抽出する。それらを質量分析により同定、イムノブロッティングにより候補と考えられるタンパク質の検出レベルの違いを明らかにする。 肝毒素によって誘導した傷害肝がん細胞株に対し、添加した修飾型DDTと未修飾型DDTが傷害からの保護作用を有するか、細胞生存率の評価に使用されるMTT アッセイにより明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の仕事の進捗によってタイミングが合わなくなり、購入のために確保していた実験動物の予算の使用が後回しになったことで次年度使用額が生じた。平成29年度に購入を予定していた実験動物および平成30年度に予定している試薬等の購入に使用予定である。
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