研究課題
基盤研究(C)
マウスに亜急性毒性レベルのメチル水銀を投与すると,典型的な水銀毒性が現れる半分ほどの投与量で,中脳水道周囲灰白質に特異的に酸化ストレスが生じ,アストロサイトが活性化され,アクアポリン4の発現が増加して,浮腫が生じた。この部位の水銀蓄積量は,メチル水銀の毒性の影響が見られない大脳皮質や小脳と同程度であり,中脳水道周囲灰白質が特にメチル水銀に脆弱であることが明らかになった。現在,この部位への毒性や他の毒性の性差と性ステロイドホルモンの関連性を調べている。
生化学
水銀はいまだにかなりの量が環境に放出されており,メチル水銀によるヒトの低濃度汚染のリスクは続いている。一方,水俣病の原因が明らかになって60年以上経過した現在でも,メチル水銀による脳障害のメカニズムやその性差には不明な点が多い。この研究では,低用量のメチル水銀による新規の脳神経毒性が見出された。これはマウスでの結果であるが,ヒトの低濃度汚染の影響部位の予想にも,哺乳類の神経毒性の性差のメカニズム解明にも寄与する研究成果である。