研究課題
食品中の残留性有機汚染物質の広範囲にわたる環境汚染が懸念される中で、天然由来の臭素化合物(NHCs)の体内蓄積性に着目している。臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)骨格をもつNHCsはアジア海域の海藻に分布しており、海産食品を通じてヒト(特に乳幼児)へ曝露影響が懸念されている。本年度の課題では、市販のエビ食品に残留する天然NHCsの残留実態を明らかにし、同時に測定される人工の有機フッ素化スルホン酸(PFASs)およびフッ素化カルボン酸(PFCAs)の組成と濃度を比較し、ヒト曝露量を推定した。日本近海産の乾燥エビを地域別に分け、NHCsおよびPFCAsをGC/MSにて、PFASsをLC/MS-MSにて定量した。エビの粉末試料(29検体)すべてからPFASs 6種、PFCAs (C8-C14) 7種およびNHCs 7種を検出した。PFCAの主成分はPFUnDA (炭素数11)で前回調査した食物連鎖上位の魚介類と比べ、約1/10の濃度であった。PFOSの主成分はPFOS (炭素数8)で、分析した総フッ素化合物の約5%を占めた。PFCAsと PFASsの濃度に相関性は見られず、両者の汚染源の違いが示唆された。エビ類のNHCsの主成分は6-methoxy-および6-hydroxy-BDE47で、魚介類に検出されるハロゲン化ビピロール類は検出されなかった。NHCsの組成は、日本近海の海藻のNHCsと類似成分であり、ヒトの食事、母乳および血液で検出される成分と一致した。海藻由来のNHCsがエビなどに生物濃縮し、海産物食事を経てヒトへ残留することが示唆された。
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Environmental Research
巻: 195 ページ: 110745
10.1016/j.envres.2021.110745
Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 24 ページ: 100807
10.1016/j.bbrep.2020.100807
Environmental Pollution
巻: 263 ページ: 114369
10.1016/j.envpol.2020.114369