研究課題/領域番号 |
17K00579
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田中 大祐 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (40360804)
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研究分担者 |
酒徳 昭宏 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 講師 (20713142)
加賀谷 重浩 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (50272894)
藤吉 奏 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定助教 (20805808)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオエアロゾル / モニタリング / 粒径 / 微生物 / 動態 |
研究実績の概要 |
本研究では,富山大学理学部屋上を中心に大気試料を分級捕集し,細菌・真菌密度と細菌群集構造の解析を行い,それらの地域や粒径による差の把握を目指している。大気試料は,2016年8月~2018年1月に富山大学理学部屋上と横浜市の建物の屋上で、アンダーセンエアサンプラーを用いて9段階に分級捕集(分級範囲:0.43~11.0μm)した。それらの試料からDNAを抽出後,全細菌と全真菌の定量をリアルタイムPCR法を用いて行った。さらに,一部の試料について,次世代シークエンサーMiseq(Illumina)を用いた細菌群集構造解析を行った。アンダーセンエアサンプラーを用いて分級捕集した試料について定量した結果,興味深いことに全真菌は,真菌の胞子のサイズに近い2.1~7.0μmの範囲の粒径で高い値を示し,富山市と横浜市で最大ピークとなる粒径に違いが見られた。この結果から,地域によって真菌の優占種が異なっていた可能性が示唆された。一方,全細菌は粒径差が見られなかった。さらに,2016年に分級捕集した試料の細菌群集構造解析の結果,門レベルではProteobacteria門,Actinobacteria門,Firmicutes門が優占していた。目レベルでは,Actinomycetales目,Bacillales目,Rhizobiales目,Sphingomonadales目が優占していた。富山市と横浜市の地域による差に関して,Rhizobiales目は富山市で多く認められたのに対し,Bacillales目は横浜市で多く認められ,地域によって細菌叢を構成する主要な細菌に差異が見られた。粒径による差に関して,Rhizobiales目は粒径2.1μm以上の粗大粒子側で多いのに対して,Actinomycetales目やBacillales目は微小粒子側で多いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒径別に捕集した大気試料について,リアルタイムPCR法による細菌・真菌密度の定量と次世代シークエンサーを用いた微生物群集構造解析はおおむね順調に進んでいる。これらの結果を日本微生物生態学会第32回大会と南米チリでの国際学会で報告することができた。また,本研究の関連論文が学術雑誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後も定期的に大気試料のサンプリングを行うと共に,リアルタイムPCR法による細菌・真菌密度の定量と次世代シークエンサーを用いた微生物群集構造解析を進める。特に,検出した微生物種が人の健康,生態系,農業などへ及ぼす影響を文献等を参考に評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費において少額の残金が生じたので,次年度に繰り越して,旅費として使用する予定である。
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