最終年度である本年度は、統計調査手法と社会影響評価 (SIA) の初期フェーズを適用した社会影響スコーピング(SIS) の手法を提案し、これを耕作放棄地対策のデザインに適用した論文を執筆し、国際雑誌で発表した。統計調査手法としては、選択実験 (CE) の先端的な手法を用いることで、効率的かつ効果的な統計調査の手法を提案した。また、耕作放棄地政策の中でも、さらに具体的な対策を検討するために、草刈対策について、その環境・社会経済変化に関する地域住民への影響(選好)を評価するための統計調査を行い、CEを効果的に活用する方法について検討してきた。 全研究期間の取り纏めは以下の通りである。農村サステナビリティプロジェクトや政策 (政策等) をデザインするためには、当該政策等の環境・社会経済的なメリットや価値を測定する必要があり、そのためには、初めに当該政策等の環境・社会経済的変化・影響を抽出する必要がある。国内の耕作放棄地が増加している背景の中で、本研究では、耕作放棄地対策をデザインするための、簡易なSIAの手法の開発を行うことを目的とした。SIAは、介入がもたらす変化や影響、すなわち、政策等の環境・社会経済的変化・影響を広範に評価できる手法だが、本研究では、日本国内で当該手法を簡易に活用できるよう、主に統計調査を用いた手法の開発を行い、SISの手法を開発した。 本研究で開発したSISは統計調査を主に用いるため、小規模な予算での実施が可能であり、国内外の農村のサステナビリティ政策等の環境・社会経済的変化・影響の抽出が容易にできる手法であると考えられる。また、SISで得られた資料は、証拠に基づく政策の基礎資料として効果的であると考えられる。
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