研究課題/領域番号 |
17K00585
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (20322381)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 塩化ベンザルコニウム / 除菌・消臭スプレー / ミスト / 動物実験 |
研究実績の概要 |
今日、除菌・消臭スプレーは日常的に汎用されている。一方で、除菌・消臭の有効成分である塩化ベンザルコニウムには、アレルギー増悪作用があることが報告されている。また、スプレー式の洗浄剤は、そうでない洗浄剤よりも呼吸器を介して生体内に入り易いことも調べられている。こうしたことから、低濃度であっても使用頻度によっては、アレルギー病態に影響があらわれることが考えられる。本研究では、ミスト状にした低濃度塩化ベンザルコニウムをアトピー性皮膚炎モデル動物に吸入させ、病態が悪化するか検討した。 NC/Nga系マウスにダニ抗原を2、3日おきに計8回、皮下投与し、アトピー性皮膚炎を誘発した。同じ期間、ミスト状にした塩化ベンザルコニウム(0.001%、0.01%、0.1%の3濃度)を、チャンバーに入れたマウスに全身曝露した。曝露時間は10分で、これを週に2~4回、計9回実施した。 アトピー性皮膚炎の症状は、最も濃度の低い0.001%で、アトピー性皮膚炎誘発のみを行った群よりも有意に悪化していた。また、アレルギー時に血液中で増加する抗原特異的IgG1抗体価が高く、アトピー性皮膚炎誘発部位の皮下組織中に集積している好酸球数も多かった。皮膚組織中のエオタキシン量も増加していた。エオタキシンは好酸球を呼び寄せる作用を有し、その好酸球は内部の顆粒を放出して組織に炎症を生じさせることから、好酸球性の炎症により症状が悪化したと考えられる。0.1%の曝露では、皮膚症状の増悪はみられなかったが、抗原特異的IgG1抗体価が有意に増加していた。0.01%では、増悪影響はみられなかった。 以上の結果から、ミスト状塩化ベンザルコニウムは、マウスのアトピー性皮膚炎症状を増悪すること、その影響は低濃度の方がより強いことが示された。このことは、塩化ベンザルコニウムの曝露量が少なくとも健康被害が生じる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通りモデル動物を作成し、解析も終了した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、ミスト状塩化ベンザルコニウムの吸入・全身曝露は、アレルギー性喘息およびアトピー性皮膚炎に対し悪影響を及ぼすことがわかった。これらの実験では、成獣マウスに対し、アレルギーの誘発と塩化ベンザルコニウムの曝露を同時期に行い、その影響を検討した。2019年度では、幼若マウスに予め塩化ベンザルコニウムを曝露し、成獣に成長した後にアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎を発症させる実験を行う予定である。これらの実験により、小児期に受けた塩化ベンザルコニウムの曝露が、後のアレルギー病態にどのような影響を及ぼすのか明らかとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が当初計画よりも節約できたため、少額ではあるが、次年度使用額が生じた。次年度の物品購入費とする。
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