研究課題/領域番号 |
17K00587
|
研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
中田 章史 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (70415420)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 野生動物 / 放射線 / 生殖細胞 / 染色体 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射性物質汚染地域のアカネズミの包括的な放射線影響評価を実施するために体細胞および生殖細胞の遺伝的変異の解析を行い、被ばく線量との関係を明らかにすることによりアカネズミの被ばく状況を把握することを目的としている。そのため、同個体の体細胞と生殖細胞の両方の標本を作成することで、アカネズミの遺伝的変異および継世代影響解析が可能となると考えている。 2017年度も継続して福島県内の空間線量の異なる複数の地点と対照地域(青森県、新潟県、長野県)において、アカネズミの捕獲を行い、各種臓器のサンプリングを行った。今年度は、従来の解析のための体細胞の染色体標本に加えて、福島県および長野県では生殖細胞の染色体標本を作成した。また、生殖細胞の染色体観察には、細胞分裂のステージや標本作成時の条件により染色体の形態の識別が困難であるため、ラボマウスの精巣から染色体標本を作成し、減数分裂におけるステージ分類を行った。今後はラボマウスの分類を基準にして、アカネズミの減数分裂時の染色体解析を行う予定である。 アカネズミは、周年を通して生殖機能や生理機能を変えることで、それぞれの季節の変化に対応しながら繁殖する季節繁殖性動物である。そのため、ラボマウスとは異なり、精巣・卵巣機能は、特有の生殖細胞の形成と衰退の調節機構を示す。そのため、アカネズミの精巣・卵巣の組織学的・形態学的変化の動態を把握するために組織標本の解析を行った。その結果、雄アカネズミの精子形成周期を明らかにした。また、雌アカネズミにおいては、卵胞の形態から非繁殖期および繁殖期の区別を明らかにし、さらに繁殖期の各期を細別した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生動物の環境影響評価を実施するためには、動物の捕獲、試料の鮮度、解析方法等に関する知見が蓄積されていないために、実験動物で行われている研究手法および結果が対応するかどうか検討が必要である。本年度においては、野生動物における継世代影響解析の指標となるマウスの減数分裂ステージの分類、アカネズミの精子形成周期、卵胞における繁殖期の区別および各機の分類を実施することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き小哺乳類の捕獲、標本作製および精子の保存を行う。 マウスの減数分裂ステージの分類を基にアカネズミの減数分裂ステージの分類を行い、放射線汚染地域、染色体異常モデルとして長野県および対照地域のアカネズミの減数分裂のステージの比較を実施する。 生殖器官について病理解析、減数分裂の正常性およびアポトーシスを解析を行う。 アカネズミの過排卵誘起、体外成熟、体外受精、受精卵移植技術の確立を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
メーカーのキャンペーン等で試薬を安く購入できたため、次年度使用額が生じた。 研究進捗としては、おおむね順調に進んでいるので、引き続き今年度と同様の研究計画で予算を執行する予定である。
|