研究課題/領域番号 |
17K00589
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山口 明美 有明工業高等専門学校, 技術部, 技術専門職員 (90399262)
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研究分担者 |
平野 将司 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 准教授 (20554471)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パスウェイ解析 / 発生影響 |
研究実績の概要 |
受精後4時間のメダカ受精卵を用いて,未処理コントロール,パルス印加のみ,パルス印加により,ビスフェノールA (BPA),またはワーファリン (WF)を導入した4つの処理群を用意した.各処理群のメダカ受精卵は,形態観察を行いながら受精後2日目または6日目まで培養し,遺伝子発現の経時変化を調査するためにシークエンス解析およびパスウェイ解析を行った.BPA暴露で受精後2日目では代謝関連のパスウェイ,受精後6日目では神経,光シグナル,免疫系のパスウェイの変動が見られた.WF暴露では受精後2日目では代謝関連のパスウェイ,受精後6日目では神経、血管系のパスウェイが変動しており,BPAまたはWF暴露により代謝系から高次機能への影響が経時的に現われることが分かった. 受精後4時間より発生の進んだ受精後1日目または2日目のメダカ受精卵にパルス印加によりBPAまたはWFを導入すると,受精後4から5時間の受精卵に導入した場合よりも低濃度で血管形成の異常が起こること,心臓の形態異常発生率が上昇することを確認した.BPAやWF以外に農薬等でも暴露試験を行ったところ,受精後1から2日目の胚は受精直後より低濃度で形態異常の発生率が上昇したことから,この発生段階の胚は外部からの物質暴露の影響を受けやすいと考えられた.受精後2日目のメダカ受精卵を用いて未処理コントロール,パルス印加のみ,BPAまたはWF導入群の4処理群を用意し,形態観察を行いながら受精後6日目まで培養してサンプルとし,シークエンス解析データを得た.今後これらのデータを合わせてパスウェイ解析を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BPAまたはWF暴露した受精後4時間のメダカ卵を用いて行ったパスウェイ解析の結果から,代謝系から高次機能への影響が継時的に現われていることを確認できた.それぞれの経路でハブになると考えられる遺伝子を探索し,暴露物質導入後から発生段階ごとにこれらの遺伝子発現の経時変化を調査する準備を行っている.これに加え,外部からの物質暴露の影響を受けやすい受精後2日目のメダカ胚を用いてBPAまたはWF暴露し,パスウェイ解析を行うことで発生段階による遺伝子発現に対する物質暴露の影響の違いについて調査する準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
パスウェイ解析の結果,BPAとWFに共通した代謝系から高次機能への経時的影響があることが明らかになったが,BPAとWF暴露での影響に類似した傾向があるため,各物質独自の経路を解析するための新たな要素が必要であると考えられた.これまでの研究で,女性ホルモンのE2をメダカ受精卵に導入すると,心臓,血管系に顕著な異常は見られないが,BPA,WF暴露ではメダカ受精卵に心臓,血管系に形態異常が見られるなど,E2暴露ではBPA,WFとは異なる影響が現われる.このことから,各暴露物質独自のパスウェイを探索するために,女性ホルモンと類似した作用を持つことが知られているBPAとE2暴露サンプルを用いて比較解析を行うことで,物質独自の経路を検索する.
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