研究課題/領域番号 |
17K00591
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
加藤 純雄 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (50233797)
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研究分担者 |
小笠原 正剛 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (40431613)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アパタイト / チャネル / 結晶構造精密化 |
研究実績の概要 |
本年度はA10(PO4)6(OH)2のアパタイト型リン酸塩のチャネル内に複数の金属イオンを導入した化合物の合成を試みた。本研究グループではこれまでにアパタイト型リン酸塩への金属水溶液の含浸後熱処理を行う方法でアパタイト型構造のチャネル内にCuおよびFeイオンが導入できることを見出している。本年度はCuおよびFeイオンを同時に導入するために本方法を適用した。具体的にはCa10(PO4)6(OH)2にCuおよびFeを含む水溶液を含浸後、焼成、急冷を行い、得られた化合物について粉末X線回折データを用いた相同定と格子定数の測定を行った。その結果、Cu、Fe量イオンを担持して焼成することでアパタイト型リン酸塩が単一相として得られたことから、複数金属イオンをアパタイト型構造内に同時に導入できる可能性が示された。 また、複数イオンの導入を検討するためには、Cu、Feそれぞれ単独で導入した場合の結晶構造の情報が必要であるため、これまで詳細な構造の報告のないFeを導入したCa10(PO4)6FexOyHzを合成し、粉末X線回折データを用いたRietveld解析による結晶構造の精密化を行った。その結果、調整時のFe含浸量の増加に伴いチャネル内サイトのFe占有率が増加することが示され、含浸法がFe導入に有効であることが確認できた。さらに、チャネル内のFeサイトに関する情報と赤外吸収およびラマン分光法による測定データから、導入されたFeイオンとCuイオンの構造内環境に関する情報が得られた。 以上より、非貴金属系排ガス浄化触媒の候補材料となるCuおよびFeを含むアパタイト型リン酸塩の調製条件と結晶構造に関する基礎的な知見が得られた、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cu、Fe量イオンの担持、焼成によりアパタイト型リン酸塩が単一相として得られたことから、当初の目的の一つであるアパタイト型リン酸塩への複数金属イオンの同時導入の可能性が示されたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではアパタイト型リン酸塩のチャネルサイトを複数金属イオンで置換した新規化合物の合成を行う予定であった。平成29年度の研究結果よりCuおよびFeイオンをアパタイト型リン酸塩に導入できる可能性が示唆された。今後、組成および合成条件の最適化を行うとともに、詳細な結晶構造のRietveld法による精密化を行う。また、高温、酸化・還元雰囲気下におけるチャネル内金属イオンの析出・固溶挙動を熱分析および水素昇温還元法などにより評価し、複数の金属を担持した触媒の調製の検討を行う。さらにこの触媒について、C3H6を用いたNO還元反応などを対象とした触媒活性の評価を行い、高活性な触媒を開発するための知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 備品として導入予定であった、ロータリーエバポレーターを代替品の利用により購入しなかったこと、および目的化合物の合成実験を予定より重点的に行ったため、触媒活性評価に用いる標準ガス等の消耗品費が予定より少なくなったことにより次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度使用分に関しては、アパタイト型化合物の調製用反応器、また得られた試料の分析に使用する機器用備品等の購入に充当する。また、消耗品として化学試薬、触媒活性評価用の標準ガスを購入する。
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