研究実績の概要 |
本研究ではこれまでにアパタイト型リン酸塩への金属水溶液の含浸後熱処理を行う方法でアパタイト型構造のチャネル内にCuおよびFeイオンが導入できること,さらに金属イオンの固溶・析出には焼成雰囲気中の水蒸気量が影響することを見出している。そこで、本年度はアパタイト型リン酸塩A10(PO4)6(OH)2のチャネル内にCuおよびNiイオンを導入した化合物からの金属イオンの析出挙動について検討を行った。アパタイトにCuおよびNiを含む水溶液を含浸後、N2中900℃で熱処理することでCa10(PO4)6CuxNiyOzを合成し、得られたアパタイト型化合物を、大気中およびN2中で熱処理を行い、金属イオンの析出挙動を調査した。その結果、CuとNi両イオンを導入する場合、Cu量が増加すると,固溶できるNi量が減少することが分かった。また, Cuのみ,NiのみおよびCuとNi両イオンを固溶したアパタイトを10%の水蒸気を含む空気中、600~900℃で熱処理した結果, CuまたはNiのみを含む試料からの金属イオンの析出温度とCuおよびNi両イオンを含む試料からのCu、Niイオンの析出温度が異なることが明らかとなり、チャネル内に固溶したイオン間で相互の析出挙動に影響を及ぼすことが示唆された。このことは固溶させる金属イオンの組み合わせにより、金属析出挙動が制御できる可能性を示しており、今後,熱処理条件と析出した金属種の組成を検討することにより、触媒の活性種となる金属種の複合化が可能となることで、非貴金属系排ガス浄化触媒の候補材料開発のための指針が得られることが期待できる。
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