研究実績の概要 |
乾式メタン発酵で生成する残渣は水分が少ないため、炭化による土壌改良材としての利用が期待されている。一方、炭化物には土壌から発生する亜酸化窒素放出を抑制する作用があることが知られている。そこで、水田土壌から放出される亜酸化窒素の炭化物の添加による削減効果および削減メカニズムの推定をアセチレン阻害法およびN2Oアナライザーにより行った。炭化温度400 ℃, 500 ℃, 600 ℃の3種類のもみ殻炭化物を添加した土壌に脱窒の基質である硝酸を添加し、湛水状態で培養した。 土壌に炭化物(400 ℃, 500 ℃, 600 ℃)を施用すると、正味のN2O生成量は減少した。炭化温度が高いほどその効果は高く、正味のN2O生成量は最大42%減少した。N2O消費量については、有意差は認めれらないものの、炭化物を添加した系の方が、対照系に比べて増加する傾向が見られた。したがって、炭化物の添加は亜酸化窒素放出の抑制に効果的であることが分かった。 嫌気的な条件下で培養を行っているため、N2O生成反応は、脱窒反応が起こると推定される。すべての系において、SP(N2O 分子N-N-Oの中央のN (α位) と末端のN (β位) の同位体比 (15Nおよび14Nの比) の差, Site Preference) は脱窒反応で生成したN2Oを示す約-10~0‰となっていた。炭化物を加えた系のほうが高いSP値を示し、炭化温度が高いほどその傾向が強まっていることから、炭化温度が高い炭化物であるほどN2O還元反応(N2O消費)が起こっていると考えられる。 炭化温度が高い炭化物では表面積やpHが高くなっており、N2Oの炭化物への吸着や脱窒細菌の活性への影響が考えられた。
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