発酵残渣の炭化物を土壌に施用した際のN2O抑制について計画していたが、十分な残渣を確保できなかったので、もみ殻炭化物を土壌に施用した際の亜酸化窒素(N2O)放出抑制および炭化物中の溶存成分がN2O削減にどのように影響するかを評価した。 畑状態の土壌に炭化物を施用すると、炭化物無施用土壌と比較して、炭化温度400 ℃で調製した炭化物では、30%N2O放出量が増加したのに対し、500および600 ℃では88および99%の削減率を示した。この傾向は、水田状態で培養した場合と同様だった。さらに、土壌中の無機態窒素は、高温で調製した炭化物を入れた系ほど、土壌中アンモニウム濃度が高く、かつ硝酸濃度が低くなる傾向にあり、硝化反応が抑制されている可能性が示唆された。 炭化物中の溶存成分がどのようにN2O生成に影響するかを調べるために、上記炭化物から溶存成分を抽出した。さらに、その抽出液を土壌に施用してN2Oの発生を調査した。土壌のみの系(対照系)に比べ、未抽出の炭化物あるいは抽出液を施用した系の方がN2O放出量は低くなる傾向にあった。さらに、アセチレン阻害法によりN2O還元速度も評価したところ、炭化物抽出液を施用すると、N2O還元速度が増加する傾向がみられた。ただし、SP値からはN2O還元が進行したかどうか判断ができなかったため、さらなる検討が必要である。N2O削減に炭化物の固形分および溶存成分がそれぞれどれほど寄与しているか推定したところ、400℃では溶存成分の寄与は4%だったが、600℃では46%にまで増加した。従って、高温で調製された炭化物では溶存成分もN2Oの削減に重要であることが示唆された。
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