研究課題/領域番号 |
17K00595
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大坂 侑吾 金沢大学, 機械工学系, 助教 (70586297)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ゼロエミッションフィルター / 大気圧非平衡プラズマ / 二酸化マンガン / 無基材フィルター / ラディアル構造 |
研究実績の概要 |
大型船舶や,小規模発電施設など,湿式排ガス浄化法が設置できない施設,移動体から排出される有害ガスのゼロエミッション化(PM除去,脱硝,脱硫)を目指して,大気圧非平衡プラズマ支援ラディアル構造化ゼロエミッションフィルターの基礎検討を実施した.脱硫フィルターとして高高性能を有する高比表面積化されたMnO2をベース材料として,脱硫,脱硝性能の評価ならびに,大気圧非平衡プラズマ重畳の効果を確認し,ガス浄化の現象の解明を目指している.本年度は,大気圧非平衡プラズマを重畳させる反応部の制作ならびに,大気圧非平衡プラズマの重畳効果を定性的に評価するための光学系の制作を行い,常温条件下で大気圧非平衡プラズマを反応場に直接重畳させることで窒素酸化物を窒素に還元可能であることを実験的に明らかにした.また,排ガス温度条件下で,マンガンフィルター上に大気圧非平衡プラズマを重畳させ,脱硫脱硝性能の評価を行う. 無基材構造化フィルターを作成するために,押し出し成型用の冶具を作成し,増粘剤や構造補強材などの合成条件を検討し,無基材でハニカム構造を有するフィルターの作成を達成した.性能は,従来の基材上に材料を担持させた既存フィルターより小型化が可能であることを明らかにした.しかし,無基材化させるため,層厚みがあつくなり,その層内拡散抵抗が性能向上を阻害させることも明らかにし,今後,層厚を薄くし,なおかつ,強度を維持した無基材ハニカム構造を作成することでさらなる性能向上が期待される.ハニカム構造を無基材で成型することを可能としたことから,ラディアル構造の作成にすすめる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,大気圧非平衡プラズマを反応場へ直接重畳させるための実験装置の制作,重畳効果を定性的に評価するための光学系の制作をおおよそ完成させ,性能評価を実施した.光学系では,可視域の分光により,OHラジカル,N2ラジカルの発光スペクトルとボルツマンプロットによりバルクガス温度ならびに電子温度を算出可能にする計算コードを作成した.大気圧非平衡プラズマを重畳させることで窒素酸化物は,窒素に還元することも実験的に確認した. フィルター設計として,無基材でハニカム構造を有するマンガンフィルターの合成に成功した.性能を基材を使用する既存のフィルターと比較して,高い性能を有することを明らかにした. これらの成果を踏まえると,おおむね順調に進んでいると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,大気圧非平衡プラズマを反応場に直接重畳させることで,脱硫,脱硝性能に与える影響を定量的に評価する.具体的には,各種ガス組成,反応温度をパラメーターとして,性能を評価し,実験結果をもとに反応速度解析を実施する.また,非平衡プラズマを重畳させるとバルクガス温度は大きく増加しないが,電子温度は約1万℃程度まで上昇する可能性が高い.そのため,各種イオン種も考慮した平衡組成をギプスの自由エネルギーと化学ポテンシャルから求める計算プログラムを作成し,その結果を速度式に展開させることで,非平衡プラズマが重畳した新規反応場の現象論の解明を行う. 昨年度,無基材ハニカムフィルターの合成に成功したため,本年度は,その無基材フィルターを用いて,最適設計指針の獲得を目指す.層厚み,層密度をパラメーターとして,脱硫,脱硝性能に与える影響を評価する.同時に,ラディアル構造化フィルターの合成も完遂させ,順次性能評価を実施する.
|