研究課題/領域番号 |
17K00600
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
朝倉 宏 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00391061)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 窒素源 / 硝酸塩 / 木材 / 分解 / 木材腐朽菌 / 酸素消費速度 |
研究実績の概要 |
本研究では,分別土などの災害に伴って発生する土砂を土木資材として有効利用するため,土砂に混入している木くず等有機炭素の簡便な削減方法を開発する。削減の方法としては生物分解させることを採用し,木材腐朽菌の働きによって木くず等有機炭素の削減を目指す。無滅菌状態での繁殖可能性を確認し,菌が繁殖するのに最適な温度と含水率を把握することで,土砂堆積現場でも適用できると考える。また,既往の研究によると窒素の添加によって木材の分解率が向上するとされているため,本研究では,窒素源として硝酸の添加による分解速度の向上を評価する。また,木材腐朽菌の繁殖条件の一つとして,酸素が必要であるとされている。土砂堆積現場での土砂中への酸素の供給は限られているため,分解の過程において酸欠を起こすことが懸念される。そのため,木材腐朽菌の働きによってどの程度の酸素を消費するのか確認を行う。 木材腐朽菌が繁殖するのに最適な条件は,培養温度30℃,含水率60%であることが示された。また,窒素源として硝酸塩の添加による分解速度の向上を評価したが,硝酸塩を添加した試料ほど分解速度は低下し,木材腐朽菌の繁殖に硝酸塩は不適切であることが判明した。今後は違う窒素源を添加することによって分解速度を評価する必要があると考えられる。そして,酸素消費速度を測定し,分解の過程において土砂中が酸欠を起こさないか確認した。土砂中に木くずが8%以上含まれている場合,木質腐朽菌によって消費される酸素を確保するために,通気パイプなどを設置する必要があると考えられた。酸素進入深さが0.3 mなら,パイプ1本で上下0.3 mに酸素が供給されるとして,0.3×2 = 0.6 mおきにパイプを設置すれば,好気ゾーンを確保できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材腐朽菌による木くずの分解速度や,速度に影響を与える因子についての基礎的なデータが得られている。これによって,目的の土砂中木くず含有量を達成するために必要な時間が計算できるようになった。また,木くずの好気的分解時に必要な酸素量の概算や,それを確保するための方策についても議論できている。以上から,研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ではビーカーレベルの実験であるため,より大型の規模や現場に近い環境での実験に進む必要がある。ビーカー実験は次元が無いため,カラムに試料を充填し,上部から降水があるような深さ方向を考えた1次元の実験に進む必要がある。また,木くずだけを用いた基礎的な実験を行っているため,実際の土壌と混合し,無滅菌とした現場を模擬した環境での実験に進む。
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