研究実績の概要 |
気体の簡易測定は、環境を考慮した持続可能な社会を構築していく上で重要な技術となり、測定対象が人関連物質である場合は生体計測への適用により人の健康管理が可能となる。本年度は、血液の循環や免疫に関係があると考えられている一酸化窒素(NO)を検出対象として莫大な表面積を持つナノ多孔体の表面及びその表面に存在する数層の水溶液中での化学反応を用いて検出し、その反応の解析を行うことを検討した。検出に用いた反応は2-フェニル-4,4,5,5,-テトラメチルイミダゾリン-3-オキシド-1-オキシル(PTIO)とNOの反応である。多孔質ガラス中のPTIOは567nm及び343nmに吸収を有し、NOとの反応により各々の波長の吸光度が減少し、その吸光度の減少量の対数は暴露されたNO濃度と暴露時間の積(蓄積暴露量)と比例関係があることが実験により明らかになった。PTIOとNOの反応は1対1の反応であり、反応式より予想される速度式を組み立て、PTIO濃度と反応時間との関係を導くとPTIO濃度の対数と反応時間に比例関係があることが導かれる。この計算結果は実験データより得られた結果と矛盾しない。そこで反応速度定数を求めるために4水準のNO暴露濃度において暴露時間を変化させた実験を行い、反応速度定数を算出した。また水溶液において同様の実験を行い、反応速度定数を算出した。得られた反応速度定数の比較より、多孔質ガラス中の反応速度定数が水溶液中の6倍の値を得た。また反応後のスペクトルの経時変化より1時間以内に90%以上の反応が終了することも明らかになった。これら結果より、作製したセンシングチップを用いることで、短時間でサブppmレベルのNO分析が可能となることが明らかになった。さらにセンシングチップのESR測定結果より、多孔質ガラス中のPTIOは溶液状態よりも固相状態に近いことが明らかになった。
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