研究実績の概要 |
気体の簡易測定は、環境を考慮した持続可能な社会を構築していく上で重要な技術となり、生体計測への適用により人の健康管理が可能となる。昨年度より、呼吸器疾患に関係があると考えられている一酸化窒素(NO)を検出対象として、莫大な表面積を持つナノ多孔体の表面及びその表面に存在する数層の水溶液中でのNOと2-フェニル-4,4,5,5,-テトラメチルイミダゾリン-3-オキシド-1-オキシル(PTIO)の反応により検出を試みている。今年度は最初に検出精度向上のため作製した分析チップの安定性を評価した。その結果多孔質ガラス中のPTIOは乾燥窒素気流中では安定に存在するが光及び水に対して不安定で、徐々にPTIOが分解していくこと、及び雰囲気中の酸素はPTIOの分解速度を遅くすることが明らかになった。そこでPTIOの自己分解とNOとの反応の両方を考慮した反応の解析を行い、567nmの吸収においては擬似反応速度定数とNO濃度との相関が計算から予想される通りに直線近似されることを導いた。また蓄積的な暴露により、暴露蓄積濃度と吸光度変化量の対数の相関を考察し、分析チップにおける直線関係の成立する測定範囲が0.34~4ppmhourであることを確認した。その後呼気分析で問題になる高湿度での分析について検討を行い、はじめにPTIOの吸収スペクトルの湿度依存性を明らかにするとともに567nmの吸光度とガラス中の水分量に比例する1900nmでの吸光度の間に線形の関係があることを明らかにし、1900nmの吸光度を用いて567nmの吸光度を補正する式を算出した。その補正式を用いて、25℃、相対湿度40~90%範囲での分析チップ感度の湿度依存性を検討し、感度が湿度には依存せずほぼ一定であることが明らかになった。さらには今期、すでに出願していたPTIOとNOを用いた分析チップの特許が登録された。
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