研究課題/領域番号 |
17K00606
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
早瀬 伸樹 新居浜工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (00311100)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スルホン化芳香族アミン / 亜硫酸イオン / スルファニル酸 / 微生物分解 |
研究実績の概要 |
本研究では、染料や合成洗剤に使用されているスルホン化芳香族アミン化合物やアルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン化化合物の分解にともない生成する亜硫酸イオンが微生物分解に与える影響を明確にし、微生物分解を促進する方法を確立することを目的としている。 これまでに、アゾ染料の還元的開裂により生じるスルホン化芳香族アミン化合物であるスルファニル酸を単一炭素源とした集積培養より624-L株、624-S株を分離している。これら菌株を、それぞれ別々に、また両菌株を混合してスルファニル酸を単一炭素源とした液体培地へ植菌し培養を行った。その結果、単独培養に比較して、両菌株の混合培養では、顕著な増殖が観察され、スルファニル酸はほぼ完全に分解された。以上の結果から、両菌株が共生することによってスルファニル酸の速やかな分解が可能になっていることが明らかになった。その理由として、スルファニル酸分解にともない、増殖阻害性の亜硫酸イオンが蓄積している可能性が考えられたことより、各培養液の亜硫酸イオン濃度を測定した。その結果、624-S株の単独培養においてはスルファニル酸分解に伴っての亜硫酸イオンの蓄積が確認されたが、両菌株の混合培養では亜硫酸イオンの蓄積は見られなかった。以上の結果から624-L株のスルファニル酸分解促進効果は亜硫酸イオンを除去することにより624-S株の増殖阻害を防止しているためと考えられた。 次に、624-L株以外での亜硫酸酸化促進の方法として、金属塩を亜硫酸酸化触媒として用いる方法と、培養時の振とう速度を上げる方法を試みた。その結果、金属触媒としてマンガンを添加すること、振とう速度を上げることで、亜硫酸の酸化を促進することができた。また、マンガン存在下でのスルファニル酸の分解量は624-S株と624-L株の共培養における分解量とほぼ同じ分解量であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜硫酸イオンがスルホン化芳香族アミン化合物であるスルファニル酸の微生物分解に阻害を与えることを明らかにし、亜硫酸イオンを酸化する能力を有すると考えられる微生物と共培養することによりスルファニル酸の分解が促進することを確認できた。また、亜硫酸イオンを除去できる金属触媒の予備的検討を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、亜硫酸イオンの除去によりスルホン化芳香族アミンの一種であるスルファニル酸の微生物分解が促進することを、スルファニル酸を炭素源とする集積培養より分離した微生物により確認することができた。そこで、今後亜硫酸イオンを除去する様々な手法について検討を進める。例えば、これまでに亜硫酸の酸化を促進する微生物や金属触媒について予備的な検討を行ってきたが、より亜硫酸イオンの除去能力に優れた微生物や金属触媒の選定を進める。そして、選定した亜硫酸イオン除去方法とスルファニル酸等のスルホン化芳香族アミン化合物を分解する微生物との組み合わせにより、スルホン化芳香族アミン化合物の分解について試験を行い、その効果を検証する。 また、スルホン化芳香族アミン以外のスルホン化合物の微生物分解において、亜硫酸イオンの微生物的酸化または化学触媒による亜硫酸イオンの酸化の効果を確認する。例えば、合成洗剤として多量に使用され、環境中にも直接放出されている可能性の高いアルキルベンゼンスルホン酸塩分解等について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、亜硫酸イオン及び硫酸イオンの測定を行うためのイオンクロマトグラフの装置が一時故障したため、亜硫酸イオン等の測定のためのフィルターや薬品等の一部を購入しなかった。平成30年度については、29年度の繰り越しと合わせて、これらの器具や薬品を購入し、予定通り研究を進める予定である。
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