研究課題/領域番号 |
17K00607
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
松家 武樹 熊本高等専門学校, 建築社会デザイン工学科, 准教授 (40517554)
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研究分担者 |
富澤 哲 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 講師 (90634709)
本田 晴香 (古賀晴香) 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 助教 (90756983)
松谷 祐希 熊本高等専門学校, 機械知能システム工学科, 助教 (80757120)
岩坪 要 熊本高等専門学校, 専攻科(八代キャンパス), 教授 (60290839)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ローカーボン / PCグラウト / 自己治癒 / サステイナビリティ評価 / 接着タンパク質 |
研究実績の概要 |
PCグラウトはコンクリート道路橋で用いられる重要な建設材料であるが、製造時に多量のCO2を排出する。また収縮に伴うひび割れの修復は、多量のエネルギーを要する大規模なものとなり、必然的に多量のCO2を排出する。PCグラウトはコンクリート内部に存在する構造だからである。本研究では従来の「レオロジー性能・力学性能」に加え、(1)新たに「ローカーボン性能」および「収縮性能、耐久性能」等の指標を取り入れた配合条件の最適化と練混ぜシステムを確立し、PCグラウトの高性能化を図る(材料工学的アプローチ)。(2)PCグラウト特有の環境下で生存する微生物を創出し、その微生物から分泌される高強度の接着タンパク質形成を利用したひび割れ部への自己治癒機能の検証を行い、PCグラウトの長寿命化を目指す(生物工学的アプローチ)。これら2つの側面からのアプローチを達成することにより、本研究目的である「ローカーボン性能を有するPCグラウトの開発」を実現する。 平成29年度は、材料工学的アプローチとして、(a)練混ぜ水の容積に対する尿素の置換率、(b)セメントの質量に対するフライアッシュおよび高炉スラグ微粉末の置換率をパラメータとして検討し、サステイナビリティの観点から評価を行い、それら混和材料を置換したPCグラウトの各種性能を明らかにした。練混ぜ手法に関しては、静置時間を設けた練混ぜ方法がレオロジー性能に及ぼす影響について検討し、その結果を分析中である。一方、生物工学的アプローチとしてひび割れ部を閉塞させる高強度の接着タンパク質の開発に関しては、大腸菌細胞を宿主としてムラサキイガイ由来の接着タンパク質の発現・精製に成功している。高強度の接着性には接着タンパク質を活性化する酵素(Ralstonia solanacearum由来チロシナーゼ)が必要であり、現在、チロシナーゼの遺伝子構築・発現条件の検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、材料工学的アプローチとしてはPCグラウトの最適配合設計および練混ぜ手法の検討を実施し混和材料の特性を明らかにしたこと、およびPCグラウト撹拌中に撹拌羽根の回転数を0~1000rpmの範囲で制御することが可能な回転速度制御装置を試作した。一方、生物工学的アプローチとしては、大腸菌細胞を宿主としてムラサキイガイ由来の接着タンパク質の発現・精製に成功するとともに、技術的な問題点を抽出することができている。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
材料工学的アプローチとしては、尿素およびフライアッシュならびに高炉スラグ微粉末の3つの混和材料を組合わせたPCグラウトの配合条件がPCグラウトの「レオロジー性能」、「力学・収縮・耐久性能」や「ローカーボン性能」、「コストパフォーマンス」に及ぼす影響を検討し、サステイナビリティの観点から最適配合を明らかにする。さらに上記3つの混和材料利用に伴うPCグラウト温度低下による周囲コンクリートへの応力低減効果を3次元FEM温度応力解析にて明らかにし、各種混和材料を用いたPCグラウトの優位性を示す。加えて、回転数を可変できる装置を搭載した試作機を用い、PCグラウトの各種性能に及ぼす効果を明らかにする。 一方、生物工学的アプローチでは、接着物質を分泌する微生物を育種するため、接着タンパク質の評価とPCグラウトに混合する微生物の選定を行う。接着タンパク質を活性化する酵素(チロシナーゼ)の遺伝子構築と発現を実現し、PCグラウト片に対する接着性試験を行う。また、微生物入りPCグラウトを作製し、微生物や培地成分がPCグラウトの物性に及ぼす影響とPCグラウト内での微生物の生存について検証する。最終的にPCグラウト内で生存可能な微生物に接着物質を分泌する能力を付与する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験がスムーズに進行したため、実験に伴う謝金の支出が少なくなった。このため繰越額(14,560円)がある。 平成29年度の繰越額については、平成30年度の消耗品に関わる費用にあてる。
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