研究課題/領域番号 |
17K00612
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
森 一博 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90294040)
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研究分担者 |
田中 靖浩 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50377587)
遠山 忠 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60431392)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウキクサ / 生育 / 栄養塩除去 / 資源生産 / モデル |
研究実績の概要 |
植物成長促進微生物(PGPB)を付着させて機能強化を図ったウキクサについて,栄養塩濃度と生育速度並びに植物体中の栄養塩含有量の関係を調べるため,無菌のウキクサとPGPB強化ウキクサ各々を様々なアンモニア態窒素及び硝酸態窒素濃度条件下で栽培した。無菌ウキクサでは比増殖速度と培地中の栄養塩濃度の間に,何れの形態の窒素に関してもMichaeris-Menten型の関係が確認された。従来の生育モデルでは全窒素濃度と生育速度の関係が用いられており,窒素の形態による影響を加味していなかったが,本研究において算出した硝酸態窒素とアンモニア態窒素に関する生育モデルパラメーターを使用することにより,窒素形態がウキクサの生育応答に与える影響をモデルに反映できることが明らかとなった。一方,PGPBで強化したウキクサでは比増殖速度と培地中の栄養塩濃度の間には無菌ウキクサとは異なる傾向が観察され,PGPBによるウキクサ比増殖速度の増強効果と培地中の窒素濃度の間に非線形関係が確認された。そこで,PGPB強化ウキクサにおいては,通常のウキクサの生育モデルにPGPB増強効果を反映させることでPGPB強化ウキクサに関する生育モデルの構築が可能なことが示唆された。また,栄養塩吸収に関して,無菌ウキクサ並びにPGPB強化ウキクサ共に窒素形態に対する選択性を有していることを確認した。さらに,栽培溶液中の窒素濃度と植物体中の窒素含有率の間にMichaeris-Menten型の関係も確認した。以上のことから,PGPB強化ウキクサにおいても,生育に伴うバイオマス生産量とバイオマス中の栄養塩含有率を各々モデルで求め,栄養塩吸収除去量を予測できることが示唆された。今後,両モデルの構築と関連モデルパラメーターの測定を継続して進めると共に,実排水での有効性も含めて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,資源価値と浄化作用を併せ持つ水生植物の根圏等に有用微生物(植物成長促進微生物(PGPB),有害物質分解微生物,等)を導入した機能強化型の植物-微生物共生系が発揮する水質浄化能力・バイオマス資源生産能力(栄養塩の植物吸収,有害化学物質の根圏分解,デンプン生産,等)を気象,水質条件を考慮して予測シミュレートすることを可能とする手法を開発する。初年度は,PGPBで機能強化を図ったウキクサについて,バイオマス生産速度及びバイオマス中の栄養塩含有率と,これらへの影響が大きい栄養塩濃度との関係について詳細な検討を進め,モデル化の可能性を示すことができた。次年度は,植物の応答パラメーターの測定を継続しこれを充実させると共に,実排水を含む各種浄化試験系での実測値とモデル予測値との比較を進め,その有効性を明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は根圏機能強化型植物-微生物共生系の環境条件への応答を実験的に検討し,それをモデル化することで地域特性を加味して機能を予測する手法を開発するものである。そのために本研究期間内に5つの課題((1) PGPB 強化水生植物の生育の環境応答のモデル化,(2) PGPB 強化水生植物による無機栄養塩類吸収作用の環境応答のモデル化,(3) 分解菌導入水生植物による有機化学物質分解の環境応答のモデル化,(4) PGPB 強化水生植物による有用物質生産の環境応答のモデル化,(5) モデルの有効性と実用性の評価)に取り組む。これらの検討には,供試植物として高いデンプン/タンパク質生産性をもち水質浄化での利用も検討される各種ウキクサなどの水生植物,機能強化のための導入微生物として植物根圏より分離された各種の植物成長促進微生物(PGPB),あるいは芳香族化合物分解菌等を各々用いて,環境応答や水質浄化試験を行い,得られた応答特性をモデル化する。既に主要な供試植物として各種のウキクサ植物,機能強化用供試微生物として複数種のPGPBや芳香族化合物分解菌を獲得しており,研究の遂行に特に問題は生じていない。
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