研究課題/領域番号 |
17K00616
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森 美穂 近畿大学, 農学部, 准教授 (70581031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネオニコチノイド農薬 / ジノテフラン / 分解菌 / 影響評価 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、屋外の実験圃場に設置された農薬未散布のコントロール区、イミダクロプリド散布区およびジノテフラン散布区(各区2反復)で、水田における農薬の連続施用を想定して、約8ヶ月間の休耕期を経た後、イネ株を移植した。試験期間は当該地域の農事暦にあわせて、5月下旬から10月下旬とし、その期間にそれぞれの区画から経時的に合計10回の水試料と土壌試料のサンプリングを実施した。各試料の細菌数と真菌数は寒天平板塗抹法により算出した。両剤の濃度は、各試料から抽出・濃縮後にLC-MS/MSで測定した。また、水試料については、COD、全リン、全窒素を測定した。ジノテフラン散布区では細菌数が、水試料と土壌試料でそれぞれ、3、7日後と1日後に若干コントロール区より生菌数が多くなったが、全期間では大きな差異は認められなかった。また、真菌数に関しては、水試料と土壌試料でそれぞれ、7日後と0、3日後に若干コントロール区より生菌数が多くなったが、全期間では大きな差異は認められなかった。水質測定に関して、3項目全てにおいて7と121日後で有意な差が認められたが、菌数との相関は確認できなかった。イミダクロプリド散布区では、散布から7日目まで、水中と土壌中の細菌数および真菌数には有意差がほとんど見られず、3つの水質項目についても散布による差異は認められなかった。ジノテフラン分解菌の単離実験では、全てのサンプルにおいてジノテフランを単一炭素源あるいは単一窒素源とした培地で増殖を確認することはできなかったが、ジノテフランを50 mg/L添加した合成培地で増殖と分解を確認でき、最終的に分解菌を1菌株単離することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画通り、屋外の実験圃場に設置した人工水田で経時的な水質測定、農薬残留濃度分析、微生物の生菌数測定を実施し、サンプリングした土壌から微生物のDNA抽出を完了した。また、分解菌の単離実験では、実験圃場以外でも土壌を中心にサンプル採取を行なった。それらのサンプルを適宜滅菌生理食塩水で希釈し、ジノテフランを単一炭素源あるいは単一窒素源とした培地、50 mg/L ジノテフランを添加した合成培地にそれぞれ植菌し、30℃、120 rpmで振とう培養を行った。菌の増殖が確認できたものはHPLCを用いてジノテフラン濃度の測定を行った。測定後、ジノテフラン濃度の減少が著しかったものを選択し、液体培地に1.5%の寒天を添加した培地を用いて菌の単離を試みた。単離菌は再び液体培地に植菌し、菌の増殖を確認後、再度HPLCでジノテフラン濃度の測定を行った。取得した単離菌の分解試験では、50 mg/L ジノテフランが28日間の培養後、39.2%減少した。また、単離菌を同定した結果、Fusarium sp.であることが明らかになった(以下YO1株)。HPLC分析では、YO1株の増殖過程でジノテフランの分解に伴い、分解産物と思われる4 個のピーク面積の増加を確認することができた。現在、抽出した微生物のDNAを用いた菌叢解析とYO1株の分解特性の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策については、概ね計画書通りに進める予定である。-80℃保存していた土壌試料からの微生物のDNA抽出が完了したため、PCR-DGGEを実施したが、現在のところ農薬未散布のコントロール区と農薬散布区で明確なバンドパターンの類似性や差異を見いだせていない。そこで今後は、泳動条件の検討とともに、次世代シーケンサーによる菌叢解析を進める予定である。また並行して、単離したジノテフラン分解菌株の分解経路や関連遺伝子の同定など、より詳細なジノテフラン分解特性について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
PCR-DGGEを実施したが、明確なバンドが得られなかったため、予定していたクローニングに必要な試薬の使用量やDNAシーケンス解析の委託数が少なくなった。次年度は、複数の泳動条件を検討するため、泳動に必要な試薬類に使用するとともに、引き続き実施するPCR-DGGEから得られたバンドからのクローニングとDNAシーケンス解析で使用する予定である。
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