人工水田として、屋外の実験圃場に農薬未散布のコントロール区、イミダクロプリド散布区およびジノテフラン散布区(各区2反復)の大型プラスチック製コンテナを6基設置し、農薬の連続施用による影響を想定して、農薬の箱処理を3年間(計30回のサンプリング)にわたり実施した。農薬の濃度は、各試料から抽出・濃縮後にLC-MS/MSで測定した。各試料の細菌数と真菌数は寒天平板塗抹法により算出し、菌叢変化の解析は寒天培地上のコロニーの形態観察とPCR-DGGEにより行った。1年目と2年目の水中のジノテフラン濃度は、散布2時間後でピークとなり以後急速に減少したが、完全には分解されず、土壌中のジノテフラン濃度は、1年目と比較して2年目において、期間を通じて上回っていた。3年間の調査で、ジノテフラン散布では、水と土壌試料ともに細菌数は未処理区と比較して大きな差は認められず、真菌数は散布7日後に菌数の増加が見られたものの、全体としての有意差は認められなかった。各処理区と様々な環境中からジノテフランを単一炭素源あるいは単一窒素源とした培地を用いて分解菌の単離を試みた結果、単一炭素源とした液体培地では菌の増殖を確認することができず、単一窒素源とした培地でのみ菌の増殖を確認することができた。単離したジノテフラン分解菌の同定を試みた結果、<i>Burkholderia</i>属菌と<i>Fusarium</i>属菌であることが明らかとなった。サンプリングした試料土壌から抽出したDNAを用いてPCR-DGGEによる菌叢解析を行った結果、細菌と真菌の両方とも農薬散布による菌叢の変化は認められなかった。
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