研究課題/領域番号 |
17K00626
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松本 明彦 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90239088)
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研究分担者 |
伊藤 博光 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00780579)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 吸着 / 吸着熱 / 真空圧力スイング吸着 / VPSA / ゼオライト / 二酸化炭素 / CO2 / 消化ガス |
研究実績の概要 |
アルミノシリケートゼオライト結晶中の陽イオンと二酸化炭素(CO2)の四重極子相互作用に着目し,消化ガス(バイオガス)から二酸化炭素(CO2)を効率良く分離する多塔式真空圧力スイング吸着分離(VPSA)装置の構築を目指している。H30年度はモデルガスに窒素N2-CO2混合ガス(60v/v%)を用い,CO2吸着分離に有効なナトリウムイオン型低シリカXゼオライト(LSX)を吸着剤として用いて,吸着過程の吸着塔内で生じた熱を回収し,脱着過程の吸着塔内に供給することで,エネルギー効率良くCO2を吸着・脱着するVPSAシステムを試作した。今年度は特にCO2を吸着している吸着塔で発生する吸着熱を,CO2の脱着・再生過程にある吸着塔に熱効率よく伝導させるため,実機でなく縮小モデル吸着塔を用いて,次の点を検討した。(1)吸着塔の材質の検討:吸着塔の材質は吸着熱による温度の上昇に関与する。今回は吸着熱を吸着塔壁から逃がすことなく,なるべく熱交換機に伝えるようにするため,材質を金属からプラスチックに変更して熱伝導性を検討した。(2)熱交換方式の改善:これまで吸着塔内に設置した熱交換用パイプ中に熱媒体の流通することで吸着塔間の熱交換を行っていた。今回は揮発性液体を封止した新規な熱伝導式の交換システムを利用して,より熱効率の良い吸着塔間の熱輸送の可能性を調べた。 その結果,プラスチックの材質の選択により,吸着熱の発生による温度上昇に耐え,再生時の真空脱気プロセスにも耐えうる吸着塔を設計できた。このモデル吸着塔は従来の熱交換パイプ中に熱媒体を流通するものよりも,効率よい脱着再生を実現できた。このシステムについてさらに改良を行い,吸着塔間の熱交換能の向上を実現する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸着塔内の熱交換システムを,従来の熱交換パイプを新規な高熱伝導パイプに交換した結果,CO2吸着過程で発生する熱を効率よく脱着過程にある吸着塔内部に伝送することができ,吸・脱着の効率を改善できた。当初は,吸着熱を回収できる流通法VPSAシステムをパイロットプラントレベルで作る予定であったが,取り扱いの簡便さからベンチスケールのモデル吸着塔で検討した結果,吸着熱のデータ(温度変化)や熱交換効率の測定結果を直ちに改良に反映することができ,効率よく改良が進んだ。この知見を次年度のスケールアップした装置製作に生かして,効率よい吸着・脱着が可能なVPSAシステムの構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きVPSA塔の改良を継続する。前年度に試作したベンチスケールのVPSA装置で得られた実験結果を活用して,10L/min程度のN2-CO2混合ガスを処理できる吸着塔を持った吸着熱回収システム付き2塔式VPSA装置を作成し,CO2 の吸着・分離挙動を調べる。装置の吸着塔以外の部分は,現有の1塔式VPSA装置を改造して用いる。VPSA装置は流通吸着系であり,平衡吸着系と異なるため,CO2 の線流速が細孔内への拡散速度や吸着速度に影響する。このため,平衡吸着法でCO2の吸着を測定して飽和吸着量を求め,流通吸着系で破過した時の吸着量(積算吸着量)と比較して,CO2 の線流速,ゼオライトビーズ径などが,積算吸着量に与える影響を調べる。これにより,吸着熱の回収も視野に入れた流通法吸着の最適条件を見積もる。 吸着熱回収流通法吸着システム自体の熱容量を見積もり,吸着に伴う吸着塔の熱交換用媒質液体の温度変化から回収した吸着熱量を求めて,平衡吸着時の吸着熱との相関関係を明らかにする。これにより,平衡吸着における吸着熱から流通法で回収できる熱量の推算を試みる。吸着熱回収流通法吸着システム自体の熱容量は,装置に一定のジュール熱を加えたときの温度変化から見積もる。 改良を繰り返しつつ,混合ガスの線流速,熱交換用の媒質などを検討しながら,運転条件の最適化を図る。現有の圧力スイング吸着システム(VPSA)に熱回収システムを組み込み,実証試験を行う。回収した吸着熱をCO2の吸着したゼオライトの脱気再生プロセスへの活用を目指して,現有の圧力スイング装置の吸着塔部分を改造する。混合ガスの線流速,熱交換用の媒質などを検討しながら,運転条件の最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
大型の吸着塔を作成する予定であったが,改良の便を考えてベンチスケールのモデルで実験を行ったため,大型の吸着塔作成に必要な金属部品等を購入しなかった。このため,次年度使用額が生じた。次年度は大型の吸着塔を作成するため,その際にこれらの予算は使用する予定である。
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