研究課題/領域番号 |
17K00627
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小島 由継 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (20394546)
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研究分担者 |
中川 鉄水 琉球大学, 理学部, 助教 (50647261)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水素貯蔵材料 / アンモニアボラン / 再水素化 / 水素化リチウム / 金属アミドボラン / アンモニア / ヒドラジン |
研究実績の概要 |
アンモニアボラン(AB:NH3BH3)は単純な分子構造のため重量当たりの水素密度が約20%と水素吸蔵合金の10倍以上である。ABの課題として水素加圧では再水素化できないことが挙げられる。申請者らはこれまでABから水素放出後に生成するポリボラジレンを液体アンモニア・ヒドラジン中で24時間保持するだけで水素が再充填されることを見出した。本研究では、アンモニアボラン同様高水素密度な水素貯蔵材料として注目されている金属アミドボラン(MAB)の水素再充填(再生)技術の開発をめざし、MABの再生反応メカニズム解明を目的とした。 水素化リチウムとアンモニアボランを反応させて、リチウムアミドボラン(LiAB)を合成した。続いてLiABを200 ℃に加熱して2当量の水素を放出させて得た生成物([LiNBH]xと考えられる)をヒドラジン-液体アンモニア混合液中で40 ℃、24時間反応させ再生を試みた。数回再生処理後を試みたにも関わらずLiABの存在は認められなかった。 そこで、LiABから90 ℃1当量の水素を放出させて合成した分解生成物を、THF中でヒドラジンと反応させた。分解生成物の11B-溶液NMRから、LiAB前駆体の生成が示唆された。また、分解生成物を液体アンモニアと反応させた場合もLiAB前駆体の生成が示唆され、アンモニアボラン水素放出試料を液体アンモニアと反応させた時に生成するB(NH2)3が観測されたた。以上から、LiABからの水素放出後に得られる分解生成物を再生するためには、水素放出量は1当量とする必要があり、その再生過程はアンモニアボランを経るものと考えられる。 金属アミドボランのスクリーニングを行うべく、種々の金属アミドボラン単相の合成を試みた。しかしながら金属アミドボラン合成技術は確立したものの単相は得られず、精製が困難であったため、単相の合成方法を確立する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他の金属アミドボラン(MAB:M=Na, K, Ca, Y, Sr)単相の合成が確立できなかったため、水素放出後、再正反応の検討を行うことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
種々の金属アミドボラン単相(MAB)を合成、または複数相の混合物でも反応過程に含まれると考えられる物質を得た後、水素放出を複数条件で試み、それら生成物とヒドラジン、液体アンモニアを反応させる。反応後の生成物をX線回折(XRD)、赤外分光分析(IR)、核磁気共鳴(NMR)により同定する。MNH2、MN2H4、MNH2BH3、N2H4、MN2H3BH3などの標準物質を合成し、反応生成物と比較することで反応過程を推測する。これらの研究を通じて、再生反応が可能な金属アミドボランを選別し、メカニズムの考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度、金属アミドボラン(MAB:M=Na, K, Ca, Y, Sr)単相の合成が確立できなかった。次年度、種々の金属アミドボラン単相(MAB)を合成する。MABから水素を放出後、ヒドラジン、液体アンモニアと反応させる。反応後の生成物をX線回折(XRD)、赤外分光分析(IR)、核磁気共鳴(NMR)により同定する。そのために、物品費、人件費等が必要である。 これらの研究を通じて、再生反応が可能な金属アミドボランを選別し、メカニズムの考察を行う。琉球大学で研究打合せを行うための旅費も必要である。
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