研究課題/領域番号 |
17K00631
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
袋布 昌幹 富山高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (50270244)
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研究分担者 |
川井 貴裕 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (50455903)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フッ素 / リン酸カルシウム / リン酸 / アンモニア |
研究実績の概要 |
本研究では第二リン酸カルシウム二水和物(DCPD)がフッ化物イオンと反応して安定な鉱物であるフッ素アパタイト(FAp)を生成する反応を,環境中未利用リン・フッ素資源のアップグレードリサイクルに展開することを目的として種々の検討を進めている。2018年度の研究実績の概要は以下の通り。 (1)DCPDから回収したFApによる脱臭性能の評価:昨年度に引き続いてFApのアンモニア吸着効果を検討した。結果,FApの結晶性とアンモニアの吸着性能に相関があることが見いだされた。この結果,FApを実際に資材として用いる際に高温での焼結等の手法は採用できず,別の対策が必要であることがわかった。 (2)FApへの金属共存効果の評価・金属共存手法の構築:分担者の川井(山形大学)のハイドロキシアパタイトへの金属共存によるアンモニア吸着性能の増大に関連する成果も活用し,未だにその詳細が明らかとなっていないアパタイト系資材のアンモニア吸着機構の検討を行った。 (3)DCPDの下水処理液等未利用リン資源からの回収:DCPDの反応性を向上させる方法として,DCPDに単純な組成の水溶液を用いてFApをハイブリッド化させることが有効であることを明らかにした。また,食品廃棄物の動物骨から得られる骨炭からのDCPD合成,それを用いたフッ素処理資材の開発を行った。 (4)実排水の検討を加えた,資源回収システムの構築:特に回収したアンモニアの利活用法の検討を,琉球大学等と連携してすすめた。また,DCPDに炭酸カルシウムを含む未利用資材をハイブリッド化させることにより,未利用資材の処理にかかるコストを相殺できるデカップリングが可能であることを見いだした。 以上の成果に基づき,最終年度の2019年度は(1)アパタイト系資材のアンモニア吸着機構の解明,(2)回収したアンモニアの利活用法の検討を進める予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アパタイト系資材のアンモニア吸着機能が未だに明らかになっていないなど,本研究を通して新たな学術的課題が見いだされ,その推進により本研究の目的をより高度なレベルで展開できることが見いだされたこと。これまでに課題となっていた「脱臭後の資材の有効利用法」に関連して,アンモニアの利活用について検討できる目処が立ったことなど,当初の計画で想定していなかった学術的な課題に取り組むことができているため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2019年度は,これまでの国内外での学会発表でのフィードバックを踏まえて検討した成果を国際学術誌に投稿を積極的に進める。また未だ未解決な以下の課題に重点的に取り組み,本研究のとりまとめとしたい。 (1)アパタイト系資材のアンモニア等の吸着機構の解明 (2)フッ素,リン含有排水処理に対して,本成果を組み込むことによって期待される環境技術面でのデカップリング効果の検討 (3)脱臭資材以外へのFApの用途展開の検討
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次年度使用額が生じた理由 |
山形大学との研究打ち合わせの準備および,「アパタイト系資材のアンモニア吸着機構」に関する調査に時間を要したため,それらに予定していた旅費,消耗品費の利用を来年度に繰り越すこととなったため。
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