研究課題
生活環境の中に存在する感染症リスクの低減を目指して、金属酸化物を中心に高い抗ウイルス活性をもつ材料の探索・作製を行った。7種の金属酸化物についてバクテリオファージを対象に抗ウイルス活性評価を行なったところ、モリブデン酸化物であるMoO3が高い抗ウイルス活性をもつことを明らかにした。また、実ウイルスであるインフルエンザウイルスやノロウイルス代替のネコカリシウイルスを対象にMoO3の抗ウイルス活性を調べたところ、バクテリオファージを対象とした時と同様に高い抗ウイルス活性をもつことが明らかとなった。MoO3は、抗菌性をもつことは知られていたが、高い抗ウイルス活性も示すという新たな知見が得られた。今年度は、同じモリブデン酸化物であるMoO2や酸化タングステン(WO3)とその抗ウイルス活性を比較することによって、MoO3のもつ抗ウイルス活性は、水分があれば溶出してくるモリブデン酸イオンや水素イオンに起因するのではないかという示唆を得た。また、MoO3は、MoO2やWO3に比較して、たんぱく質変性能力が高いことも、アルカリフォスファターゼの酵素活性を対象に明らかにした。一方で、MoO3のもつ高い抗ウイルス活性を活かして、新規な可視光応答型光触媒材料が作製できないかと、酸化チタンとモリブデン酸化物を組み合わせた材料(以下Mo/TiO2)を浸漬法にて作製した。バクテリオファージ、インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスを対象に作製した材料の抗ウイルス活性を調べたところ、暗所下でも抗ウイルス活性が認められたが、1000lxの可視光照射下では、さらに高い抗ウイルス活性が観察された。これらの結果は、Mo/TiO2が可視光応答性をもちながら、抗ウイルス活性を示すことを示唆した。以上、本研究では高い抗ウイルス活性を示すMoO3があることを見出し、さらに新規な可視光応答型光触媒材料を作製した。
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