研究課題/領域番号 |
17K00635
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
飯塚 和也 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20344898)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 木本植物 / 放射性セシウム / 樹幹木部 / 循環と蓄積 / 経根吸収 / 環境制御 |
研究実績の概要 |
2011年3月に発生した福島原子力災害由来の放射性セシウムは、事故6年以上を過ぎた今日でも、社会的に大きな問題になっている。そこで本研究は、放射性セシウムを樹幹木部内蓄積させるという、「林業的除染」の可能性を実証するため、調査を進める。目的は、森林生態系における物質循環に基づき放射性セシウムの樹幹木部の蓄積機構を解明することである。 事故の初期においては、放射性セシウムは、樹木において、大気中から直接、樹冠の枝葉や樹皮の表面付着・沈着、そして根から吸収(経根吸収)される。また、事故後に植栽された樹木は、経根吸収によって、樹体内に移行していく。樹幹木部に吸収された放射性セシウムは、樹高(垂直)方向と半径(水平)方向に移動している。 半径方向の放射性セシウムの移動については、樹高方向に水分通導機能のある辺材から、ほぼ死んだ組織から形成されている心材へ移動し、そこで蓄積されると考えられるが、メカニズムは未だ不明である。また、心材において放射性セシウムは拡散により移動していると推察されているが、その機構の解明に向けても研究を進める。 経根吸収の影響を明らかにするため、スギクロ-ンを汚染地帯に植栽し、放射性セシウムの吸収能にクロ-ン間差の存在の有無を明らかにする。さらに、経根吸収に関し、アーバスキュラ-菌などの菌根菌が放射性セシウムの吸収に関与しているかについて、調査する。 以上より、本研究の目標は、物質循環に基づく樹幹木部への集積・蓄積の解明、ならびに樹幹木部への集積・蓄積することによる「林業的除染」の可能性の評価とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの主な進捗状況は、下記に示すとおりです。 ・事故後初期において樹皮に付着・沈着した放射性セシウムは、事故後の比較的早い時期に、可溶性のものは樹幹木部あるいは樹幹流とともに地上へ移動した結果、不可溶性のものは今だに樹皮に固定・固着していることが推察された。 ・スギにおいて放射性セシウムの辺材から心材への半径方向の移動は、心材と辺材のカリウムの濃度勾配に関係していることが示唆された。視覚的にみると、カリウム含有量の多い黒心材系のものは、赤心材系のものよりも、放射性セシウムの辺材から心材が、容易であることが推察された。 ・スギ心材部位において、辺材の隣接部から髄に至る半径方向の放射性セシウム濃度の分布は、樹木サイズ(直径)に依存していることが示唆された。サイズの小さいものは、平衡状態(均一)になる時期が早いことがわかった。 ・心材部における放射性セシウムは拡散により移動することが推察されている。拡散速度は遅いため、直径が60cmを超える個体では、辺材に隣接部ではに放射性セシウム濃度が最も高く、髄周辺では最も低い値を示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の主な推進方策は、下記に示すとおりである。 ・スギ心材におけて放射性セシウムは蓄積(貯留)されていくと推察されるが、心材中においても放射性セシウムは移動しているため、その機構を解明する。 ・経根吸収に関し、2011年以降に植栽されたスギについて部位ごとの放射性セシウム濃度分布を把握する。また、樹幹木部については、心材の形成が確認された2008年のスギを供試し、辺材と心材に関する放射性セシウムの分布を把握するため、安定セシウム(Cs133)との関連を検討する。 ・経根吸収の機構を検討するため、菌根菌の存在や役割について調査する。また、2018年5月に植栽したスギクロ-ンを用い、葉に検出されるだろう放射性セシウムを調査することで、クロ-ンによる吸収能の有無を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
・予定していた謝金対象の実験補助の学生が、就職活動のため、使用できなかった。 ・安定セシウム(Cs-133)の測定を外部機関に依頼する計画していたが、一部材料が揃わなかったため、次年度に測定することとした。
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