研究実績の概要 |
福島原発事故後10年を迎える2020年度における研究成果の概要は、下記のとおりである。 ①2008年に植栽した林齢12年のスギ(平均樹高:11.7 m,胸高直径:12.9 cm)の樹体に検出あれるCs-137は、ほぼ経根吸収由来と推察される。これらのスギを数個体伐採し、雄花の花粉嚢、それが着生していた葉、頂端シュ-ト、地上高9m部位の樹幹材と樹皮、0.1m部位の心材、辺材、樹皮のCs-137放射能(Bq/kg dw)を測定した。その結果、花粉嚢>頂端シュ-ト>0.1m部位の樹皮≒葉の順で、Cs-137放射能が高い値を示した。花粉嚢の値が高い個体は葉も高い値を示し、個体に関係なく各部位における放射能が検出される順は、決定されてた。 ②コナラ類のシイタケ用原木について、一般的にCs-137は、辺材は心材よりが高い値を示すが、スギと心・辺材の関係と逆である。この要因のひとつは、コナラ類では、木部に分布しているカリウムと含水率において、スギと異なり、辺材と心材の間に有意差が検知されない場合があり、両者の差が明確でないことと推察された。 ③若齢なスギ10クロ-ン各3個体を供試した試験地において、経根吸収により樹木の葉の検出されるCs-137は、遺伝子型よりも植栽された場所の表層土壌の含水率とCs-137放射能に影響されることが推察された。また、森林地における土壌A層の深度30cmまでの各5cm単位のCs-137とK-40の分布について、福島原発事故後10年(2020年3月)と事故後2年半(2014年9月)を比較を試みた結果、両者にはほぼ同様な傾向を示した。Cs-137は表層5cmまでに85~90%が、10cmまでに95%程度が存在した。一方、K-40は、各5cm層にほぼ均一に存在していた。
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