研究課題
淡水産シアノバクテリアによるシアノトキシン汚染が海域に及ぶことについては、あまり注目されていない。一つの理由は、淡水産のシアノバクテリアが海に流入した場合には浸透圧の関係で死滅し、天然毒のシアノトキシンも自然分解されると理解されてきたからであろう。しかし、我々は、有明海において、広範囲のかいてい堆積物や水生生物から、シアノトキシンの仲間であるミクロシスチン類が検出される事を把握していた。そこで、今回の研究では、堆積物中でミクロシスチンがどの程度分解され、残留してゆくのか明らかにすることを中心に調査実験をおこなった。その結果、ミクロシスチンはアオコ発生期の水温では一ヶ月程度で半減するが、摂氏20度以下では分解が殆ど進行しないことが確認された。そして、その理由は、分解菌による分解が進行しないためである事がリアルタイムPCRによって明らかとなった。同時に実施した、一次生産調査は台風等によって、肝心のシアノバクテリア最盛期のデータがとれていないが(今期、私費による調査予定)、光量子計データによると、表層30cm程度までしか光合成が行われておらず、湖沼生態系としての通常の機能が失われていることも明らかになった。これは極端に貧弱な底生生物相となっても現れている。なお、私事だが、昨年より手の振戦をともなうパーキンソン病になり、ELISAやPCRの一部データの バラツキが多くなっている。8月に手術を受ける予定であり、その後に一部の凍結サンプルについては再検査したものを論文化したい。
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日本ベントス学会誌
巻: 73(2) ページ: 123-128
Ecotoxicology and Environmental Safety
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https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2019.109477