研究課題
屋久島・西部地域は世界遺産にも指定され厳重に保護さている地域であるが、近年ニホンジカ(以下シカ)の高密度化が問題視されている。ただし、よく調査されているのは、かつて人がかなり伐採した海岸に近い二次林である。西部地域全体では、シカをはじめとする中・大型哺乳類がどれくらい生息しているかは、よく分かっていない。とりわけ人為的な攪乱のほとんどない一次林での生息状況を把握することが、この地域全体のモニタリングや、保全のためには不可欠である。中・大型哺乳類の密度の基礎的な情報を得るために、自動撮影カメラを西部地域の4カ所(一次林に2箇所、二次林に2箇所)に設置し、その撮影枚数から相対的な密度を推定した。調査地は、県道に近い 標高約40~200mの二次林と、標高約340~580mカ所の一次林である。撮影は2017年7~11月、2018年7~11月に調査を行った。各地点約20台のカメラを140m間隔のグリッド状に配置し期間中連続して撮影した。ただし大量の写真が撮影されたため、まだ全ての分析は終了していない。これまでに分析できた結果からは以下のことが示唆された。1)シカは二次林の2つの調査地で撮影頻度が非常に高く、一次林の2つの調査地ではこれに比べるとかなり低い。シカの生息密度が二次林と一次林でかなり異なる可能性が示唆される。また、当歳児の撮影率から、シカの出産率が二次林では低くなっている可能性も示唆された。2)ニホンザル(以下サル)では、二次林の1箇所と一次林の1箇所で撮影頻度が高く、二次林の1箇所と一次林の1箇所で撮影頻度が低くなった。シカとは異なり、一次林、二次林という植生の違いでは、密度の違いが説明できない可能性がある。二次林の二箇所については、直接観察によるサルの密度推定の結果とも傾向は一致しており、二次林の中でも違いがあるとは言えそうである。
3: やや遅れている
大量のデータが取得できたため、解析が十分にできていない。信頼性の問題から、現状では人による写真判定が現実的である。今後、分析方法の検討を行い、分析の補助者を雇用するなどして対応する。
今年度も、自動撮影カメラを用いた中・大型哺乳類の密度推定を行い、一次林と二次林の比較に加え、その経年的な変化について検討する。また、二次林において、ニホンジカとニホンザルの直接観察による、密度調査を継続する。分析においては、カメラの撮影日数を増やすよりも台数を多くすることで安定した結果が得られるようである。カメラの台数は維持しながら、解析する日数を減らすことで解析の早く進める。
すべて 2018
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)