本研究は、渓流生態系におけるサケ科魚類を対象に、移入種の定着が生産構造に及ぼす影響、すなわち、「資源分割を介した魚類の総生産量の増加と被食者(底生無脊椎動物)現存量の低下」という予測の検証を目的としている。調査は、四国の仁淀川水系・黒川源流域で行い、在来種であるアマゴと移入種であるイワナの共存が、これら2種の総生産量を高めるかどうか、また、被食者である底生無脊椎動物への捕食圧が高まるかどうかの2点について検討している。2017年度に総計16区間の調査地を設定し、2017年6月、8月、11月、2018年4月に魚類の標識再捕調査を行い、魚類のサイズ、成長、個体数、および現存量に関するデータを得て、その動態を解析した。被食者については、2017年夏季と2017-18年にかけての冬季に底生無脊椎動物のサンプリングを行うとともに、2018年初夏には水生昆虫(底生無脊椎動物)の羽化量を測定するための飛翔性昆虫の採集を行った。2019年度は、これら2017~18年に得られた底生無脊椎動物と飛翔性昆虫の全てのサンプルの処理、定量を完了した。また、関連する追加の調査として、2018年度より開始したイワナによるアマゴの捕食調査の最終調査を2019年夏に終え、それらのデータ整理を完了するとともに、繁殖期におけるイワナとアマゴの分布および種間関係に関する情報も得るために、産卵床に関する調査も補足的に行った。得られた結果の一部は日本魚類学会で発表した。
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