研究実績の概要 |
2019年5月24日~12月1日までの延べ191日間,2018年に引き続いて管理放棄された水田での地下水位および地上に形成された水たまりの水位を水位ロガーで測定(1回/30min)した。その結果,水たまりの周囲の地下水位と連動した変化がうかがえた。一方で,近辺にありながら異なる地下水位変動がみられた地点があり,これは山側からの地下水供給のためと推察された。昨年では,水たまり近辺の水田に灌漑されると地下水位が上昇し,水たまりの水位も上昇したことから,谷底面においてどこでもカエル類の再生産可能な恒常的な水たまりが形成されるわけではなく,灌漑によって地下水位を上昇させ,水田生態系を支えていた側面が示唆された。 他方,恒常的水域である谷底面上を流れる青森県高瀬川水系の小河川では,管理放棄によって魚類の生息ポテンシャルが高まる可能性が考えられた。その理由のひとつには,小河川の周囲に遊水地が複数形成される傾向にあることに着目し,Stream Visual Assessment(SVAP)手法を用いて魚類生息環境を評価した。フェーズ第一として,本種法が対象小河川に適合するか否か確かめるために,エレクトリックショッカーを用いた12区間での魚類採捕を実施し,採捕密度とSVAP評価による総合評価点との関係を確認したところ,有意な関係であることが認められた。同規模での小河川での同様の総合評価と比較しても高い評価点であったことから,管理放棄された小河川では,水路・水田生態系の劣化と異なる変化がみられることが把握された。
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