日本に見られる多くの里地里山において、現在その保全と活用が課題とされている。里山では落葉のような枯死した有機物を起点とする腐食連鎖が成り立っている。このことから、里山の物質循環を考える上で落葉の分解に着目することは重要と言える。落葉分解については土壌と水域それぞれで研究が行われているが、出水や渇水により陸域と水域が入れ替わりやすい里山小渓流での有機物の挙動に関する研究は少ない。本研究では里山を流れる小渓流を対象として、常緑広葉樹の落葉の分解速度を明らかにするとともに、分解に関わる大型無脊椎動物を明らかにした。里山に一般的にみられる常緑樹からシラカシ、ツバキ、クスノキの3樹種を選定し、それぞれ川のみ、陸のみ、川から陸の入れ替え(川陸)、陸から川の入れ替え(陸川)の4条件5反復を設定した。採取した落葉を風乾した後、リターバッグ法を用いて、小渓流の陸域と水域に1樹種10個ずつ設置した。設置1ヶ月後に陸と川から1樹種5個ずつ無作為に選定して設置場所を入れ替え、さらに1ヶ月設置した後回収した。回収後、落葉の残存率の算出と出現した生物の同定計数を行った。落葉の残存率は樹種間で有意差は認められなかったが、条件別では川、川陸、陸川、陸の順に低かった。出現生物は、川、川陸、陸川においてユスリカ目が約半数を占めた。川と陸川ではミズムシ科、ヒメガガンボ亜科がそれに次いで見られた。川陸では水生生物がほぼ見られなくなり、トゲダニ亜目等陸上の生物が主に出現した。陸ではそれに加えハガヤスデ科等の陸上生物のみが出現した。出現生物群集の個体数を用いたクラスター解析の結果、川と陸川が最も近く、次いで川陸で、陸で出現した生物の種数が最も異なるという結果になった。
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