研究課題/領域番号 |
17K00653
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
鹿島 基彦 神戸学院大学, 人文学部, 准教授 (10443251)
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研究分担者 |
内山 雄介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (80344315)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サンゴ / 黒潮 / 数値モデル / ブイ観測 / コネクティビティ / 南西諸島 / 石西礁湖 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
国内最大のサンゴ礁海域である石垣島-西表島間の「石西礁湖」は、その規模と黒潮上流域に位置することから、南西諸島全域のサンゴ再生の観点から極めて重要な海域と考えられている。サンゴは熱帯・亜熱帯の生物の生息環境を支える存在であり、そのため漁業や観光業などの人間社会にも大きく関わっている。しかし、国内最大の亜熱帯の観光地である沖縄本島域ではサンゴの生息環境が近年壊滅的な状況にあるために、その再生には同域内部からのサンゴ卵供給だけでなく、南西諸島全域からのサンゴ卵供給も重要と考えられる。 GPS表層漂流ブイ観測とROMS数値モデルによる表層粒子追跡実験から、石西礁湖周辺海域を発した表層粒子が南西諸島沿い黒潮下流域などへ多く拡散することと、その一部が沖縄本島域に十分に辿り着くことが確認された。さらに、石西礁湖周辺海域の中でも、特に鳩間島北岸をはじめとした西表島北岸海域と石垣島北岸海域からのサンゴ卵が多く黒潮に乗り、下流域に拡散する結果が得られた。逆に、石西礁湖内部から黒潮に乗るサンゴ卵は少ない傾向が見られた。このように石西礁湖周辺海域から黒潮下流域へのサンゴ卵供給源「サンゴ卵重要スタート海域」をおおよそ推定することができた。 現地の取材調査からは、石西礁湖海域でサンゴ保護活動を行う団体は多数あり、おおむね活発に行われていることが確認された。特に、石西礁湖南部石垣島側ではサンゴの「苗作り」や「植え付け」によるサンゴの養殖活動も官民一体となって近年試みられている。上記「サンゴ卵重要スタート海域」推定結果と組み合わせることで、より効果的な南西諸島全域のサンゴ再生計画の設計ができると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
漂流ブイ観測と整合性のとれた数値モデル計算結果が順調に出ており、サンゴ卵重要供給源特定などの当初の主な目標がほぼ達成されている。成果発表も順調に進展している。 石西礁湖周辺海域のサンゴ保護活動の実態把握についても取材調査を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は成果発表をより進展させることと、サンゴ保護活動の実態把握についての取材調査を本格的に進める。 研究計画段階では確認されていなかった石西礁湖での2016夏~秋期のサンゴの白化現象により、サンゴ卵の供給源である石西礁湖のサンゴ生息状況は急激に悪化した。本来は石西礁湖を発したサンゴ卵の黒潮下流域への供給のみを想定していたが、今後は逆に石西礁湖へのサンゴ卵流入と石西礁湖のサンゴ回復についても考察を進める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していたサンゴ保護活動の取材調査が延期になったことと、予定していた論文投稿の延期により英文校閲費が残ったため。次年度はこれらの活動費は同活動内容で使用する予定である。
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