研究課題/領域番号 |
17K00655
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
吉村 真由美 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, チーム長 (40353916)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 水生昆虫 / セシウム / 渓流 / 汚染 / 半減期 / 空間線量率 |
研究実績の概要 |
原発事故により、放射性物質が環境中に放出され、渓流の落ち葉、藻類、砂、底生動物、魚などが放射性セシウムによって汚染された。放射性セシウムは長期にわたって川の生態系に大きな影響を与えるため、川の中における拡散と崩壊のメカニズムを明らかにしておく必要がある。 渓流の落ち葉、藻類、砂、底生動物における放射性セシウム濃度の生態学的半減期と空間線量率との関係を調べたところ、空間線量率が低い地域ほど放射性セシウム濃度の生態学的半減期は長くなった。また、空間線量率が低い地域では、藻類から底生動物への移行係数が高くなった。一方、藻類の放射性セシウム濃度と流速との関係を調べたところ、空間線量率の高い地域では、流速が大きいほど放射性セシウム濃度は低くなったが、空間線量率の低い地域では、逆に流速が大きいほど放射性セシウム濃度が高くなる傾向が認められた。これらの結果は、放射性セシウムによる汚染が長く続くことを意味している。 放射性セシウム濃度は、汚染度が高い地域では指数関数的に減少するが、汚染度が低くなると、流速などの様々な環境要因の影響が顕在化して、単純な減少傾向を示さなくなるのだと考えられる。このように、汚染度が低い地域の渓流生態系の放射性セシウム濃度を理解するには、流速が一つの鍵になることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の約8割を終了できている
|
今後の研究の推進方策 |
放射性物質の存在による水生昆虫体内の炭素・窒素安定同位体比の変化の有無を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、調査できる期間が限られた。また、本年度参加予定であった国際昆虫学会が来年度に延長となったため、成果の取りまとめ・世界への発信が困難となった。さらに、査読者・編集者の都合により、投稿中の論文の査読・雑誌への掲載承認・不承認の連絡が遅く、成果の取りまとめがなかなか進まなかったため。
|