本研究は、日本の脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素のポテンシャル及びCO2削減効果を評価するとともに、水素エネルギーを利用した地域エネルギーシステムを設計した。まず、日射量や風況などの気候条件や土地利用条件等の地域ごとに異なる地域特性をデータベース化し、地理情報と組み合わせることで、水電解装置の規模と効率を考慮したCO2フリー水素のポテンシャルマップを作成した。得られたCO2フリー水素のポテンシャルマップと、道路網、電力網等の輸送ネットワークを組み合わせて、CO2フリー水素供給システムを設計して、需要地への供給に伴うエネルギーやコストを解析した。また、水素供給システムのインベントリ分析と、エネルギー経済モデルを組み合わせることで、運輸部門の低炭素化に向けたシナリオを分析した。さらに、電力、熱、輸送用燃料として水素を利用した場合のCO2排出量及びコストを、既存のシステム、化石燃料由来の水素や他の再生可能エネルギーを用いたシステムと比較することで、CO2フリー水素の利用が低炭素化及びレジリエンスに与える影響を評価した。構築した水素供給システムと、蓄電池など水素以外のエネルギー貯蔵技術などを考慮した地域エネルギーシステムの設計手法を組み合わせて、東北地方や秋田県を対象としたエネルギーシステムを設計することで、脱炭素化とレジリエンスを両立する社会システムの構築に求められる技術開発、インフラ整備、政策などを示した。
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