研究課題/領域番号 |
17K00659
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
渋谷 嗣 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (00154261)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 損傷モニタリング / 磁性エラストマー / 環境エネルギー回収 |
研究実績の概要 |
風力発電においては,近年,風車の出力を大きくするために風車は大型化し,最大では風車ブレード直径が100mを超えるものまで作られ,近年飛躍的に大きくなっている。また,温暖化などの環境の変化から大型の台風の出現頻度も増加している。想定を超えた自然環境に対応するためにも環境とブレードの挙動に関してデータを常に蓄積して次世代の風力発電用ブレードの設計に生かす必要がある。風力発電用ブレードの大型構造に関する破損や損傷に検出のために,構造の応答を常時モニタリングして解析する。また,構造に配置したセンサからの信号収集に関して,IoT技術を利用して恒久的に無線送信データを得るために,磁性エラストマーの変形を利用した環境発電(Energy Harvest)とブレードの能動的減衰について検討することを目的としている。 磁性微粒子をエラストマーに分散させ,磁性を有するエラストマーについて,粒子レベルの微視力学的解析のために,磁性粒子の周期配列を仮定した単位セルモデルからエラストマーの変形特性と電磁応答特性を評価した。微視力学的な特性評価の妥当性を明らかにするために,磁性粒子をエラストマーに分散した柔軟に変形可能なポリマー磁石の試料を用いて,電磁加振器を用いて過渡応答試験を行った。また,環境発電の設計指針を得るために,磁性エラストマーの巨視的特性を同定するために,その粘弾性特性の同定には分数階微分(Fractional Calculus)を用いた構成モデルを作成した。Fractional Calculusを用いると零階微分と1階微分の中間の微係数を定義することができることから,磁性粒子をエラストマーの巨視的特性に対する周波数特性を比較的に良く同定することが可能にした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性微粒子をエラストマーに分散させ,磁性を有するエラストマーについて,粒子レベルの微視力学的解析のために,磁性粒子の周期配列を仮定した単位セルモデルからエラストマーの変形特性と電磁応答特性を評価したこと。また,磁性粒子をエラストマーに分散した柔軟に変形可能なポリマー磁石の試料とコイルからなる発電系を兼ねた応答試験によってエネルギー回収の予験と,電磁加振器を用いて応答試験を行った。また,環境発電の設計指針を得るために,磁性エラストマーの巨視的特性を同定するために,その粘弾性特性の同定には分数階微分(Fractional Calculus)を用いた構成モデルを作成し,磁性粒子をエラストマーの巨視的特性に対する周波数特性を比較的に良く同定することを可能にしたこと。
|
今後の研究の推進方策 |
磁性エラストマーの電磁・機械特性に関する理論的,実験的評価をふまえて,磁性エラストマーを用いた減衰装置と電力回収システムの構築と風力発電用のブレードを模擬した構造の損傷位置同定の解析的・実験的研究を行う。構造物の振動応答から固有モード形状の推定および固有モード形状の変化からの損傷位置推定法を拡張して,分散して配置した加速度センサの信号から損傷推定を可能にするために,風力発電用のブレードを模擬した構造に対して,送信機を内蔵した市販の加速度センサを配置して,構造物の振動により磁性エラストマーの変形と電気エネルギーの振動応答試験から構造の損傷推定を行う。また,磁性エラストマーを用いた制振で吸収した振動エネルギーを電気エネルギーとして回収する実証試験を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は初年度であり,次年度のモデル実験に備えたコンピューターによる数値解析とその検証試験を主に行った。数値解析や検証試験は,既存のワークステーションや実験装置を活用できたので次年度への繰り越しが生じた。平成30年度は風力発電用のブレードの模擬構造による主として実験的研究を行う予定である。その実験的研究において追加的に必要になる実験データの取得のために使用する。
|