研究課題/領域番号 |
17K00660
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
橋本 誠司 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30331987)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 振動発電 / 衝撃構造 / パワーマネージメント |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,エネルギーマネージメントを考慮した振動発電による自己完結型電源システムの開発であり,2年目の平成30年度計画は1年目に開発した自己完結型電源システムの実応用となる。この目的の下,今年度は応用分野として期待される無線センサノードへの電源供給に向けたパワーマネージメントシステムの構築,最適発電構造の提案,製品化に向けた耐久性評価を実施した。ここでは,機械工場設備の振動により加速度センサノードを駆動し,えられる間欠的なセンサ情報に基づく故障診断システムの構築を行った。本開発システムでは,振動からの回生エネルギーにより断続計測方式ではあるが,加速度センサノードを50ms間隔で駆動し,えられたデータに対し学習理論を導入することで80%以上の高確率で故障診断が可能となることを実際の工場振動を用いて実験検証した。 また,昨年度に引き続き各種振動に対する最適構造(形状,厚さ,面積など)の短期開発を目指し,振動発電シミュレータの開発を実施した。ここでは,数十パーセントの誤差での推定が可能となっている。 更に,自己完結型電源システムの応用として,大規模災害など災害医療現場で利用可能な小電力機器用電源システムの開発を進めている。ここでは,昼間の作業時に災害医療派遣チームが履く安全靴で発電・蓄電し,夜間作業時にLED照明やスマホによる情報発信に利用可能な電源システムを構築し,その試作品を製作した。 実施項目に関する研究成果として,Journal論文3編ならびに国内外の学会5件にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に開発した各種発電構造による自己完結型電源システムの応用として,センサノード駆動による工場機器の故障診断システムの構築に加え,新たに被災地医療現場で利用可能な発電靴の開発にも着手しており,当初計画以上に順調に進んでいる。また,各種振動に対する最適構造の短期開発のために,振動発電シミュレータの開発も進めているが,おおむね順調である。 一方,発電靴による一日の作業量(歩数)での発電量(蓄電量)は,現状試算ではスマホバッテリー容量のわずか数パーセント程度であり,発電構造や発電手法の改善・向上を図る必要がある。これについては,開発した振動発電シミュレータを併用し次年度に実施予定である。 以上より,全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本開発のシステムでは,振動からの回生エネルギーにより加速度センサノードを50ms間隔で駆動し,そのデータに基づき,学習理論を導入することで80%以上の高確率で故障診断が可能となることを実際の工場振動を用いて実験検証した。本開発システムは,今後ビックデータに基づくITやAI技術が導入される工場での利活用が可能であり,実用化可能性は非常に高いと思われる。今後は,本システムの耐久性評価,低コスト実現に加え状態・寿命推定機能などのデータ利活用機能の付加など,実用化を目指した開発を進めていく予定である。 また,今年度は被災地で医療活動を行う災害派遣医療チームとともに,これまでに開発した振動発電技術を災害医療現場で利用できないかの検討を開始した。今後は,災害医療派遣チームの重要な任務の一つである夜間実施の情報発信作業に利用可能な発電靴について,最適エネルギー回生構造とそのマネージメントシステムを開発していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の研究費は,一部次年度に繰り越したが,ほぼ予定通りに使用している。 次年度の使用計画は,繰り越した予算も加味し,工場設備診断への導入のための振動発電装置のパッケージング化,被災地利用のための発電靴の試作材料費,PZT 素子(特注品)やセンサノード,エネルギーマネージメント電子回路部品,機械部品費,負荷試験や耐久試験,データ解析のための研究補助員の謝金,海外研究協力者との打ち合わせ,国内外での学会発表のための旅費,論文発表のための研究成果発表費を予定している。
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